いづも屋百貨店

いづも屋百貨店：上越地方を彩った老舗百貨店の歴史

1920年（大正9年）、新潟県高田市（現上越市）で創業したいづも屋呉服店は、1927年（昭和2年）、いづも屋百貨店として新潟県で最初の百貨店となりました。高田の銀座と呼ばれた本町3-5丁目に位置し、屋上遊園地や映画館を併設するなど、上越地方の中心的存在として賑わいを見せていました。

しかし、1970年代半ばからは、競合店の進出により厳しい経営状況に直面します。1974年（昭和49年）には長崎屋、翌年には大和が相次いで進出し、競争は激化。1976年（昭和51年）には、ジャスコ（現イオン）と業務提携を結び傘下に入りましたが、店名はそのまま営業を続けました。

その後も、直江津へのショッピングセンター出店計画が地元反対により頓挫するなど、様々な課題に直面します。1970年代の都市計画変更に伴う公共施設の移転や、モータリゼーションの進展による駐車場不足、交通渋滞といった問題も、旧市街地中心の店舗運営に影を落としました。

集客力の低下を打破するため、いづも屋百貨店は1981年（昭和56年）、郊外への移転を決断。1985年（昭和60年）2月20日、約63年の歴史に幕を閉じました。同年11月22日には、郊外の土橋に後継店舗「イヅモヤジャスコ高田店」を開業。しかし、1996年（平成8年）3月、上越ショッピングセンターへの移転と同時に「ジャスコ上越店」に改称し、イヅモヤの名は歴史の舞台から消え去りました。

いづも屋百貨店跡地の変遷

1987年12月から解体が始まったいづも屋百貨店跡地は、その後、数度の建替えを経てホテルとして生まれ変わりました。1990年代に上越ワシントンホテルとしてオープンした後、上越マンテンホテル、ロワジールホテル上越、ホテルラングウッド上越と名称を変え、現在はアートホテル上越として営業を続けています。

一方、「イヅモヤジャスコ」跡地には、2001年（平成13年）に上越市市民プラザが開設され、地域住民の憩いの場となっています。

いづも屋百貨店が象徴する時代

いづも屋百貨店の歴史は、単なる一企業の興亡物語ではありません。それは、高度経済成長期からバブル崩壊後の変革期まで、日本の商業構造の変化、地方都市の商業活性化、そして郊外化という社会現象を反映した物語です。競争激化、郊外への人口移動、そして大型店の台頭など、様々な要素が絡み合い、最終的に老舗百貨店の閉店という決断へと繋がりました。いづも屋百貨店の歴史は、地方都市の商業史において重要な一ページを刻んでいると言えるでしょう。

関連事項

イオン(企業): いづも屋百貨店と業務提携した企業
大和(百貨店): いづも屋百貨店のライバル企業
* あすとぴあ高田: いづも屋百貨店跡地の向かいに建つ再開発ビル

いづも屋百貨店の歴史は、日本の高度経済成長期から現代に至るまでの商業構造の変化、そして地方都市の変遷を象徴する物語であり、今後の地方都市活性化を考える上でも重要な示唆を与えてくれるでしょう。

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