いとこ同志 (映画)

『いとこ同志』：ヌーヴェルヴァーグの傑作が描く、都会の光と影

クロード・シャブロル監督による1959年のフランス映画『いとこ同志』（原題：Les Cousins）は、ヌーヴェルヴァーグを代表する作品の一つとして高い評価を受けています。ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞するなど、その芸術性と社会性を高く評価され、フランス映画史に名を残す作品となっています。

本作は、性格が正反対の従兄弟2人、シャルルとポールのパリでの生活を描いています。田舎で育ち、法学を学ぶためにパリに来た真面目なシャルルと、都会的で享楽的な生活を送るポール。対照的な2人は、同じアパートで共同生活を始めますが、その生活を通して、それぞれの生き方や価値観が試されていきます。

シャルルは、パリで出会ったフロランスという女性に恋をします。しかし、フロランスはパールの魅力に惹かれ、シャルルを振り切ってポールと関係を持ち始めます。この三角関係を通じて、都会の複雑な人間関係や、若者たちの葛藤が浮き彫りにされていきます。

シャブロル監督は、本作でヌーヴェルヴァーグの作家性を存分に見せています。自然光を多用した撮影や、ドキュメンタリータッチの演出は、当時のフランス社会の雰囲気をリアルに捉えています。また、登場人物たちの心理描写も深く、彼らの葛藤や苦悩が丁寧に描かれています。

主演を務めたのは、ジェラール・ブランとジャン＝クロード・ブリアリ。シャブロル監督の前作『美しきセルジュ』に続いての共演となります。そして、フロランス役には、化粧石鹸のコマーシャルで監督の目に留まったジュリエット・メニエルが抜擢され、映画デビューを果たしています。

『いとこ同志』は、単なる恋愛映画ではありません。都会の喧騒の中で、若者たちがそれぞれの生き方を探し求める姿を通して、現代社会の問題や人間の複雑な心理を深く掘り下げています。シャブロル監督の緻密な演出と、魅力的な俳優たちの演技が融合した、観るものを魅了する傑作と言えるでしょう。

1958年7月から8月にかけてブローニュ＝ビヤンクールの撮影所で撮影された本作は、1959年3月11日にフランスで公開。同年6月にはベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞し、同年10月10日には日本で公開されました。第2回フランス映画祭でも上映され、批評家からも高い評価を得ています。

映画評論家の品田雄吉氏も、映画祭のレポートで本作について触れており、その高い評価を裏付ける証となっています。

『いとこ同志』は、ヌーヴェルヴァーグの代表作として、そしてフランス映画史に残る名作として、今なお高い評価を受けています。その芸術性と社会性を深く理解することで、映画鑑賞の幅が広がることでしょう。 様々な解釈が可能な余地を残した、観る者の心に長く残る作品です。

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