うごかし屋

うごかし屋

『うごかし屋』は、芳崎せいむによる日本の漫画作品。小学館の漫画雑誌『ビッグコミックオリジナル増刊号』で連載開始後、『ビッグコミックオリジナル』へ移行し、全4巻で完結しました。

概要

物語は、引越しや輸送を請け負う「うごかし屋」の面々と、様々な事情を抱えた依頼人たちが織りなすヒューマンドラマです。読書好きの社長・蘇芳鉄が、引越しという人生の一大イベントを通して、依頼者の抱える問題や心の機微に寄り添い、荷物だけでなく彼らの心をも動かしていきます。

各エピソードは「依頼その○」と数えられ、各話で夏目漱石の『草枕』や井伏鱒二の『山椒魚』など、「住」にまつわる文学作品や童話がモチーフとして用いられています。

登場人物

蘇芳鉄（すおう てつ）

うごかし屋の社長。元銀行員で、父親の急逝後、家業を継ぎました。飄々とした雰囲気ですが、独自の引越し哲学を持ち、依頼人の心を掴む力があります。読書家で、常に本を携帯しています。

花田（はなだ）

うごかし屋の社員。16年前から勤務しており、元レーシングドライバーという異色の経歴を持ちます。運転技術は確かですが、女性好きで軟派な一面も。

東雲（しののめ）

うごかし屋の社員。花田と同時期に入社しました。寡黙で硬派な性格で、花田の軽率な言動を諌めることが多いです。元白バイ教官で、主要道路を暗記している記憶力の持ち主。ピアノ演奏も得意です。

真朱（まそほ）

うごかし屋の番頭の孫娘。両親を亡くし、うごかし屋の仕事を手伝っています。可憐な容姿に似合わず、怪力の持ち主です。

海松（うみまつ）

小説家。スランプになると引越しを繰り返す癖があり、うごかし屋の常連客です。過去にうごかし屋に原稿捜索を依頼したことがきっかけで、信頼を寄せています。

イトウ

東京草原社の編集者で、海松の担当。頻繁な引越しに手を焼いています。

木賊（とくさ）

凄腕の補修屋。過去のトラウマから酒とギャンブルに溺れる生活を送っています。

黒鳶（くろとび）、灰桜（はいざくら）、栗梅（くりうめ）

うごかし屋の臨時従業員。普段はそれぞれの仕事を持っており、繁忙期に手伝いに来ます。

七色の箱

うごかし屋では、荷物の内容によって色分けされた段ボール箱を使用しています。

珊瑚色の箱：洋服
浅葱色の箱：食器
鳥の子色の箱：本類
山吹色の箱：依頼者が隠したいものを入れる箱。中身は決して見ない。

各話タイトルと登場する本（一部）

各エピソードのタイトルは、登場する文学作品やモチーフにちなんだものとなっています。

錫色の国 - 『草枕』（夏目漱石）
山吹色の箱 - 『タゴール詩集 ギーターンジャリ』（ラビンドラナート・タゴール）
香染色の仏 - 『恐怖の報酬』（ジョルジュ・アルノオ）
真朱色の列車 - 『内田百閒集成2 立腹帖』（内田百閒）
空色の道 - 『虚構の春』（太宰治）
桜色のドレス - 『フォークナー短編集』（ウイリアム・フォークナー）


『うごかし屋』は、引越しという日常的な出来事を通して、人間模様や心の機微を描き出す、温かいヒューマンドラマです。各話に散りばめられた文学作品の引用も、作品に深みを与えています。

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