うつろひ

アルバム『うつろひ』の紹介

『うつろひ』は、1981年6月25日にリリースされた、シンガーソングライターさだまさしのソロ6枚目のオリジナルアルバムです。本作は、前作『印象派』と同様に服部克久が制作に携わり、特にさだがアルバム制作に取り組んでいた頃の心境や社内の状況が反映されています。特に、前作まで漢字3文字のタイトルが続いていましたが、今作ではタイトルがひらがなで、収録曲のタイトルはすべて漢字3文字というユニークなスタイルが採用されました。

制作背景

アルバム制作当時、さだは「関白宣言」や「防人の詩」での大ヒットを受けた反動で社会からの批判に直面し、心身ともに負担を感じていました。また、映画『長江』の制作による多額の借金が重なり、精神的に不調でした。そのため、本作のライナーノートは前作のような凝ったものとは対照的に、文章4ページと写真2ページから成るシンプルな構成となっています。デザイン面では『夢供養』に似た手法が用いられ、各曲の歌詞と解説文が掲載されています。

付録『嫁入新聞』

『うつろひ』の初期のLPには特別付録として『嫁入新聞』が付属しており、新聞形式を模した冊子です。この新聞のタイトルは、『読売新聞』のパロディで、内容はほとんど冗談で構成されています。ただし、映画『長江』の広告や白鳥座のデビュー告知など一部は事実に基づいています。また、求人情報の中には、「安眠」の新料理人を募るユニークな募集も見られ、アルバムのテーマに関連するギャグが盛り込まれています。

収録曲の解説

アルバムはA面とB面に分かれており、各曲には深いテーマが込められています。

A面

1. 住所録 - 別れた恋人の電話番号を捨てられない女性の心情を描いた曲。
2. 鳥辺野 - 恋の破局の物語として、かつての葬送地を歌ったもの。
3. 第三者 - 前作の「検察側の証人」への返答となる一曲。
4. 邪馬臺 - 故宮崎康平の鎮魂歌として、幻想的なストーリーが展開されます。
5. 肖像画（ポートレイト） - 制作時に収録時間の都合でカットされたが、再び日の目を見ることとなった楽曲。

B面

1. 昔物語 - 友人との変わらぬ友情を描いた楽曲で、憧れの加山雄三を意識したと言われています。
2. 明日檜 - 果たせぬ悲願をテーマにした作品で、アスナロという木に込められた思いやさだの父親の言葉が反映されています。
3. 分岐点 - 過去の恋人が失恋に苦しむ様子を歌い、少しの希望を持つ男の気持ちが表現されています。
4. 黄昏迄 - 亡くなった恋人を懐かしむ曲で、アルバム発表後に再リリースされました。
5. 小夜曲（セレネード） - 文語体で書かれた歌詞が特徴的で、作曲は服部克久によるものです。

参加ミュージシャン

アルバムには、多くのミュージシャンが参加しています。主なアーティストとして、アコースティックギターの谷康一、エレキギターの松原正樹、ピアノの羽田健太郎、ドラムの村上秀一などが名を連ねています。

結論

『うつろひ』は、さだまさしの独自の世界観を持つアルバムであり、深いメッセージやテーマが込められています。彼の音楽への思いと、当時の心情を反映した作品のひとつとして、多くのファンに愛され続けています。

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