うなぎ (映画)

映画『うなぎ』の概要

1997年に公開された映画『うなぎ』は、吉村昭の小説『闇にひらめく』を基にした作品で、今村昌平が監督と脚本を手掛けました。松竹が制作・配給を担当し、主演には役所広司と清水美砂が起用されています。この映画は、第50回カンヌ国際映画祭において、他の作品とともにパルム・ドールを受賞したことでも知られています。

物語の背景

本作は、不倫した妻を殺害した中年男性の物語です。彼はその後、人間不信に陥り、自らの心を開く相手を探し求めることになります。出所した彼は、ペットのウナギを受け取り、静かな理髪店を営む生活を始めます。ウナギは、彼にとって唯一心を通わせられる存在となります。

そんなある日、彼は川原で倒れている女性を見つけます。なんとその女性は、彼が殺した妻にそっくりでした。女性は一命を取り留め、感謝の意を込めて彼の理髪店で働きたいと申し出ますが、彼は戸惑いながらも女性を受け入れることになります。町の人々は彼らの新たな関係を歓迎しますが、女性にはある秘密が隠されている様子があります。

キャスト

本作には魅力的なキャストが揃っており、役所広司が演じる山下拓郎の内面的な葛藤や清水美砂が演じる服部桂子の複雑な状況が、観客に強い印象を与えます。また、佐藤允や柄本明といった実力派俳優も参加しており、物語に深みを与えています。

受賞歴と評価

『うなぎ』は、カンヌ映画祭での受賞だけでなく、1998年には日本アカデミー賞でも優秀主演男優賞と助演女優賞を受賞し、国内外で高い評価を受けました。今村監督は本作により、2度目のパルム・ドールを獲得することとなり、監督としての地位を確立しました。

エピソードと興味深い事実

タイトル「うなぎ」の「う」は、尾びれがついており、ウナギの姿を連想させる工夫がなされています。カンヌ映画祭の受賞時、監督は早々に帰国してしまい、受賞の知らせを受けた際には映画祭関係者が急遽呼び戻す努力をしたものの、主役の役所広司が代理で受賞することとなりました。

また、製作発表の際は、タイトルを変更するという前代未聞の出来事がありました。これは、映画製作に対する今村監督の強い意志を反映しています。原作に関しても、吉村昭の他の作品が参考にされており、深い文学的背景が作品に色濃く反映されています。

結論

ひとつの事件が引き起こす人間関係の変化と、それを通じて描かれる人間の心理がこの作品の魅力です。『うなぎ』は、深いテーマを持つ作品であり、観る人に様々な感情を呼び起こす名作といえます。

もう一度検索