おしゃれキャット

『おしゃれキャット』：パリの貴婦人猫と自由奔放な仲間たちの冒険

1970年、ウォルト・ディズニー・プロダクションによって生み出されたアニメーション映画『おしゃれキャット』。洗練されたパリの街並みを舞台に、優雅な母猫とその子猫たちが巻き起こす、ユーモラスで心温まる物語が展開します。

製作秘話：ウォルト・ディズニーの遺志と、才能あふれるスタッフ

本作の企画は1961年に遡ります。ウォルト・ディズニーは、当初は実写映画として構想していましたが、出来上がったストーリーの素晴らしさから長編アニメーション映画へと変更。美術監督ケン・アンダーソンは1年半もの歳月を費やし、綿密な準備を進めました。しかし、ウォルト・ディズニーの急逝という困難を乗り越え、脚本家ウィンストン・ヒブラーとウォルフガング・ライザーマンが製作を引き継ぎました。

音楽面では、ジョージ・ブランズがフランス風の軽快な楽曲を提供。さらに、シャーマン兄弟がオープニングテーマを制作し、モーリス・シュヴァリエの歌唱によって作品に華を添えています。400万ドル以上の予算を投じ、35人のアニメーターが32万5千枚以上の原画を描き上げました。主要なシーンでは、900もの背景画が使用されるなど、細部へのこだわりが随所に見られます。

クラシックとジャズの融合：音楽と人種的多様性の表現

『おしゃれキャット』は、格式高い貴族猫と自由奔放な野良猫という対比的なキャラクターを軸に物語が展開します。この対比は、クラシック音楽とジャズという音楽文化の対照によって効果的に表現されています。パリという、クラシックとジャズ音楽が共に栄えた街を舞台に選んだことは、この音楽的対比を際立たせる上で重要な要素となっています。さらに、ジャズを演奏する猫たちのグループは、様々な国籍や人種的背景を持つ猫たちで構成されており、ジャズ音楽が持つ人種混合という歴史的背景も巧みに反映されています。

ストーリー：遺産相続と冒険の旅

パリに住む美しい母猫ダッチェスと、三匹の子猫トゥルーズ、ベルリオーズ、マリー。裕福な飼い主であるボンファミーユ夫人は、莫大な遺産を猫たちに残そうとしていました。しかし、執事のエドガーはこれを聞きつけ、猫たちを郊外に捨ててしまいます。

そこで出会ったのは、陽気な野良猫オマリー。ダッチェスたちはオマリーと共に、パリへの帰路を目指します。旅の途中で、様々な仲間たちと出会い、助け合っていく中で、ダッチェスとオマリーの間には、特別な感情が芽生えていきます。

魅力的なキャラクターたち：個性豊かな登場人物

本作には、個性豊かなキャラクターたちが数多く登場します。気品あふれるダッチェス、自由奔放なオマリー、いたずら好きで可愛らしい三匹の子猫たち、そして、策略家である執事エドガー。さらに、ジャズを演奏する個性的な野良猫たち、ダッチェスたちを助ける犬やガチョウなど、それぞれのキャラクターが物語に彩りを添えています。特に、マリーは日本では圧倒的な人気を誇り、多くのグッズにも登場しています。

日本における人気：マリーと『おしゃれキャット』

日本では、映画公開当初は大きなヒットには至りませんでしたが、2002年以降、仔猫マリーが女子高生を中心に人気を集め、キャラクターグッズが多数発売されました。現在でも、マリーは『おしゃれキャット』よりも先に認識されているほどの人気キャラクターとなっています。敬宮愛子内親王もマリーを気に入っていることで知られています。

結論：時代を超えて愛される名作

『おしゃれキャット』は、美しい映像、軽快な音楽、そして魅力的なキャラクターたちが織りなす、心温まる冒険物語です。公開から半世紀以上経った今でも、多くの人々を魅了し続けている名作と言えるでしょう。様々な困難を乗り越えて完成した本作には、ウォルト・ディズニーの情熱と、スタッフたちの才能が惜しみなく注ぎ込まれています。その魅力は、時代を超えて多くの人々の心に響き渡るでしょう。

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