おじか型巡視船 (初代)

おじか型巡視船：戦後日本の海上保安を支えた艦艇群

海上保安庁に所属した「おじか型」巡視船は、旧日本海軍の海防艦を改造した巡視船です。日振型、鵜来型海防艦を母型とするこれらの艦艇は、戦後の日本の海上保安体制の構築に重要な役割を果たしました。本稿では、その歴史、運用、そしてそれぞれの艦の晩年について詳述します。

誕生の背景：戦後日本の気象観測

高度な気象レーダーや気象衛星が普及する以前、日本の周辺海域、特に外洋における気象観測は困難を極めました。そのため、気象観測船による観測が不可欠でした。戦後、アメリカ合衆国からの要請を受け、日本政府は日本の周辺海域における気象観測を開始します。

当初は戦前から運用されていた気象観測船のみが使用されていましたが、観測範囲の拡大に伴い、より多くの船舶が必要となりました。そこで、第二復員省が所有していた、復員輸送や掃海活動に従事していた海防艦4隻（生名、竹生、鵜来、新南）が気象観測任務に充当されました。さらに、米軍の連絡船として使用されていたのち保管艦となっていた志賀も加わり、合計5隻の海防艦が気象観測船として活躍しました。

これらの艦艇による気象観測は、主に北方と南方の定点で行われ、台風や梅雨前線の動向把握に大きく貢献しました。しかし、サンフランシスコ平和条約の発効に伴い、アメリカ合衆国からの財政支援が打ち切られたことで、1953年には定点観測は一時中断されました。

しかし、南方定点観測は日本の気象観測にとって重要であったため、日本単独で観測を再開することが決定されました。そして、1954年、これらの海防艦5隻は海上保安庁に移籍し、「おじか型」巡視船として新たな任務を開始しました。

海上保安庁における活躍：多様な役割

海上保安庁に所属後、おじか型巡視船は気象観測任務の継続に加え、海上における捜索救難活動にも従事しました。これは海上保安庁が組織としてまだ発展途上であった時期であり、長距離救難活動において大きな役割を果たしました。

就役当初は武装していませんでしたが、その後、アメリカ合衆国から兵装の貸与を受け、Mk.22 3インチ単装速射砲などの兵器を搭載するようになりました。また、「こじま」は米軍の連絡船として使用されていた際に居住設備が強化されていたことから、海上保安大学校の練習船として遠洋航海などに利用されました。

艦艇の晩年と保存運動

戦時急造艦であったこと、長年の酷使、そして海上保安庁の近代化による巡視船艇の充実により、おじか型巡視船は1960年代中盤に順次退役しました。「つがる」は石油開発公団の宿泊船としてボルネオ島で運用されました。「こじま」は千葉市に払い下げられ海洋公民館として使用されていましたが、老朽化と建築基準法・消防法の不適合により閉館。太平洋戦争に従軍した艦艇として最後の現存艦であったことから、保存運動も起こりましたが、1998年に解体されました。

映画における登場

映画『モスラ』では、「さつま」がインファント島調査隊を輸送する船として登場し、海上保安庁の全面協力のもと、実物が撮影に使用されました。

まとめ

「おじか型」巡視船は、戦後の混乱期から日本の海上保安体制の確立に貢献した重要な艦艇群でした。気象観測、救難活動、練習船としての運用など、多様な役割を果たし、その歴史は日本の海上保安の歴史と深く関わっています。それぞれの艦の最期は異なりましたが、その功績は決して忘れられることはありません。これらの艦艇の歴史は、日本の戦後復興と平和維持への努力の一端を垣間見せてくれます。

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