おじか型巡視船 (2代)

おじか型巡視船：日本の海上保安体制を支えた1000トン型巡視船

概要

おじか型巡視船は、海上保安庁が運用していた1000トン級の巡視船です。PL（Patrol vessel Large）型に分類され、高い航行能力と多様な装備を備えていました。ネームシップである「えりも」の配置替えに伴い、2000年以降は「えりも型」と呼ばれることもありました。本型は、先行する「のじま」型（のちの「おき」）巡視船の発展型として設計されており、性能向上と装備強化が図られています。

設計と性能

おじか型巡視船は、「のじま」型をベースに設計されました。最大の変更点はヘリコプター甲板の設計です。「のじま」型では船首楼甲板よりも一段高く設置されていましたが、本型では強度甲板と面一に設計され、より大型のヘリコプター、シュペルピューマの運用にも対応できるようになりました。また、安定性の向上を目的としてフィンスタビライザーも搭載されています。

推進システムは、新潟鐵工所またはヤンマー製のディーゼルエンジン2基を搭載し、可変ピッチ・プロペラとバウスラスターを組み合わせた推進システムを採用しました。これにより、高い機動性と操船性を確保しています。さらに、「のじま」型で船体中央に設置されていた煙突は、本型では左右2本に分離され、その間にROV格納庫や潜水作業機材の準備室、消火用放水銃などが配置されました。

装備

武装面では、ネームシップ「えりも」は「のじま」型と同様にJM61-M 20mm多銃身機銃を搭載していました。2番船以降は、船首甲板にエリコン35mm機銃も追加装備されました。搭載艇は、煙突両舷のミランダ式ダビットに高速警備救難艇と潜水支援艇を搭載。ネームシップ「えりも」には、さらに船尾に5.5メートル型高速警備救難艇用のウェルドックが備えられていましたが、荒天時の運用に課題があったため、2番船以降は救難資材倉庫となりました。一部艦艇では複合艇を搭載していました。

曳航能力は30トンと、大型タンカーの曳航も想定された設計となっています。1995年の阪神・淡路大震災や1997年のナホトカ号重油流出事故を契機に、災害対応能力の強化も図られ、「はかた」以降は油回収装置も搭載されました。また、全艦が潜水士7名乗船の救難強化巡視船として指定されています。

配備と運用

おじか型巡視船は7隻が建造されました。建造が7隻で終了したのは、不審船事件や尖閣諸島問題への対応として、より高速で高機能な巡視船の配備が優先されたためです。運用期間中には、東日本大震災で「くりこま」が被災し、修理を経て復旧しました。また、「えりも」は解役後、マレーシアへ供与され、「ペカン」として運用されています。

登場作品

おじか型巡視船は、人気ドラマシリーズ『海猿シリーズ』にも登場しています。劇中では、海上での様々な災害や事故に対応する活躍が描かれています。

まとめ

おじか型巡視船は、日本の海上保安体制において重要な役割を果たした巡視船です。その高い性能と多様な装備は、日本の排他的経済水域の警備や、災害対応において大きな貢献を果たしました。本型巡視船の技術や経験は、後続の巡視船の設計・建造にも活かされ、日本の海上保安技術の発展に大きく寄与しています。現在、その多くは退役していますが、その功績は今後も記憶に留められるべきでしょう。

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