おっさんのケーフェイ

映画『おっさんのケーフェイ』解説

『おっさんのケーフェイ』（英題：DYNAMITE WOLF）は、谷口恒平監督が手掛けた、2019年公開の日本映画です。本作は、谷口監督にとって初の劇場用長編作品であり、大阪府の助成事業「CO2」の一環として制作されました。監督自身の資金調達とクラウドファンディングにより完成した、自主制作の熱意が込められた作品です。

作品概要

本作は、プロレスを軸に、小学生と自称プロレスラーの中年男との交流を描くコメディです。谷口監督は、以前手掛けた心霊作品の経験から、真実と虚構が交錯する世界を描くことに挑戦しました。当初は心霊もののプロットでしたが、マッスル坂井主催のプロレスイベント『マッスル』に触発され、プロレスをテーマにした物語へと大胆に転換されました。

タイトルにある「ケーフェイ」とは、プロレス業界の隠語です。作中では、真実と虚構が混ざり合う象徴として用いられています。ただし、プロレス関係者の助言により、劇中ではこの言葉は使用されていません。それは、この言葉がプロレスを批判する意味合いで使われる場合もあるからです。谷口監督は、観客が映画を観終わった時に「ケーフェイ」を感じ取ってくれることを期待しています。

ストーリー

主人公は、冴えない日々を送る小学生の大翔（ひろと）。学校ではダンスに熱中するクラスメイトにからかわれ、何か夢中になれるものを探していました。ある日、道頓堀プロレスの会場に迷い込んだ大翔は、ローカルプロレスラー、ダイナマイトウルフの引退試合に心を奪われます。その帰り道、大翔は謎の中年男性・坂田と出会い、プロレス技で助けられます。坂田がダイナマイトウルフのマスクを持っていたことから、大翔は友人を巻き込み、坂田にプロレスを教わる日々が始まります。しかし、テレビでダイナマイトウルフが市議会議員選挙に出馬すると報じられ、その素顔が明らかになるところから物語は展開していきます。

登場人物

坂田光一（演：川瀬陽太）：河原でプロレスごっこをする謎の中年男性。その正体は物語の鍵を握ります。
青木ヒロト（演：松田優佑）：冴えない小学生。運動も勉強も苦手で、ダンス部でも挫折を味わっています。
森田真司（演：赤城）：市議会議員を目指すプロレスラー、ダイナマイトウルフ。
丸山拓巳（演：小林陽翔）、北山直哉（演：埜田進）：ヒロトの友人たち。
川島輝男（演：神保舜莉紋）：ダンスが得意なクラスメイト。ヒロトを小ばかにしています。
靖隆（演：松浦祐也）、佳奈子（演：ぽんちくりん）：輝男の両親。PTA会長と丸顔の母親です。
ダンス講師（演：MoMa）：ダンス教室の先生。テレビ取材も受ける実力者。
政仁（演：渡辺厚人）、佳奈子（演：富永茜）：ヒロトの両親。父の教えは「嘘をつかない人になること」。
道恵（演：伊藤壽子）：坂田の母親。息子をプロレスラーだと信じています。
野洲圭吾（演：原篤志）：道頓堀プロレスのスタッフ。
ヒロトの担任（演：小夏いっこ）：ヒロトのクラス担任。
JKリフレ嬢・サラ（演：辻凪）、JKリフレ嬢・リナ（演：山下りな）：リフレ嬢。
冨宅飛駈（演：冨宅飛駈）、空牙（演：空牙）、マグニチュード岸和田（演：マグニチュード岸和田）、菊池悠人（演：菊池悠人）、スペル・デルフィン（演：スペル・デルフィン）：プロレスラー本人役で出演。

スタッフ

監督：谷口恒平
脚本：橋本夏
撮影：金碩柱
照明：市川高穂
録音：松野泉
美術：塩川節子
編集：塩谷友幸
音楽：堀本陸、馬瀬みさき
制作：和田裕也
特別協力：道頓堀プロレス
プロレス監修：空牙
マスク、コスチューム制作：ドラゴン・ユウキ
制作：花園シネマ
配給：インターフィルム

音楽

主題歌：チッツ「メタルディスコ」（こんがりおんがく）

作品の特徴

本作は、自主制作映画ならではの独特な雰囲気と、プロレスを題材にした斬新なストーリーが魅力です。観客は、コミカルな展開の中に潜む、真実と虚構の曖昧さを楽しむことができるでしょう。また、個性的なキャラクターたちが織りなす人間ドラマも見どころです。谷口監督は、この作品を「最後の自主制作」と位置付けており、その熱意がスクリーンから伝わってきます。