おとめ座超銀河団

おとめ座超銀河団（おとめざちょうぎんがだん、Virgo Supercluster） とは、私たちの銀河系（天の川銀河）や隣の大きなアンドロメダ銀河、そして大マゼラン雲などが集まってできた「局所銀河群」を含む、広大な宇宙の構造体の名称です。この超銀河団は、時には「局所超銀河団」あるいは「局部超銀河団」とも呼ばれます。

この巨大な構造は、大きく分けて二つの主要な要素から成り立っていると考えられています。一つは「降着円盤」と呼ばれる平たい円盤状の領域、もう一つは「銀河ハロー」と呼ばれる細長い領域です。

平らでパンケーキのような形をした降着円盤には、私たちが見ることのできる光を放つ銀河全体の約60パーセントが存在しています。この降着円盤自体も、いくつかの銀河の集まりである「銀河クラウド」が集まって構成されています。具体的には、超銀河団の中心でもある「おとめ座銀河団」、そして「りょうけん座クラウド」、「おとめ座IIクラウド」という三つの主要な銀河クラウドが降着円盤を形成しています。

一方、銀河ハローは、降着円盤を取り巻くように細長く伸びた領域です。こちらには、光を放つ銀河全体の約40パーセントが存在するとされています。銀河ハローもまた細長い銀河クラウドが集まってできており、その方向は超銀河団の中心に位置するおとめ座銀河団を指し示しています。

おとめ座超銀河団の広がりは非常に大きく、その直径はおよそ2億光年にも達します。これは距離に換算すると約1×10²⁰キロメートルという途方もないスケールです。この巨大な領域の中には、およそ100もの銀河群や銀河団が含まれており、前述の通り、その中心部には数多くの銀河が集まる「おとめ座銀河団」が鎮座しています。

おとめ座超銀河団の総質量は、内部の銀河の動き方に対する重力の影響を詳しく調べることで推定されています。その結果、この超銀河団の質量は約10¹⁵太陽質量、つまり太陽の1000兆倍にも達すると見られています。興味深いのは、この質量に対して、超銀河団全体が放つ光の量が比較的少ないという点です。このことは、質量の大半が、私たちが見ることのできない謎の物質であるダークマターによって占められていることを強く示唆しています。

さらに、おとめ座超銀河団は宇宙空間で静止しているわけではありません。この構造体自体が、より大きな重力の中心へと引き寄せられていると考えられています。その重力源は「グレート・アトラクター」と呼ばれており、じょうぎ座銀河団の近くに位置する巨大な重力的な異常領域とされています。私たちのおとめ座超銀河団は、このグレート・アトラクターに向かって運動していると考えられています。

このように、おとめ座超銀河団は私たちの銀河系が属する広大な宇宙構造であり、その構成、規模、質量、そして他の構造との重力的な相互作用を理解することは、宇宙全体の大規模構造を知る上で重要な一歩となります。

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