おのちゅうこう

小野忠孝（おの ちゅうこう）

小野忠孝（1908年2月2日 - 1990年6月25日）は、昭和期に活躍した日本の児童文学作家、詩人です。本名を小野忠孝（おの ただよし）といい、群馬県利根郡白沢村（現在の沼田市）で生まれました。豊かな自然の中で育まれた感性は、彼の作品に色濃く反映されています。

生涯

小野忠孝は、沼田中学（現・群馬県立沼田高等学校）から群馬師範学校（現・群馬大学教育学部）へと進み、卒業後、教職の道を歩み始めます。教員として子供たちと触れ合う中で、児童文学への関心を深めていきました。

文学活動においては、河井酔茗に師事し、1932年に処女詩集『牧歌的風景』を発表。その後も詩作を続け、1941年には詩集『日本の教室は明るい』が高村光太郎の推奨を受けるなど、詩人としての評価を高めます。

1942年には講談社から童話『氏神さま』を出版し、児童文学作家としての活動も本格化させます。1943年に教職を辞してからは、創作活動に専念しました。

1965年、『風は思い出をささやいた』で野間児童文芸推奨作品賞を受賞。1966年には、故郷である白沢村の椎坂峠に自作の詩「望郷」を刻んだ文学碑が建立されるなど、その功績が広く認められるようになります。

1970年には、文化団体「タラの木文学会」を結成し、雑誌『タラの木』を創刊。詩と児童文学運動を推進しました。また、郷土の小中学生を対象とした「おの文学賞」を創設し、30年にわたり郷土文化の振興に尽力しました。

1979年には児童文化功労者表彰を受け、1981年には『風にゆれる雑草』で日本児童文芸家協会賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。1989年には、郷里である白沢村で名誉村民条例が制定され、名誉村民第一号として顕彰されています。

1990年6月25日、肺線維症による呼吸不全のため、82歳で生涯を閉じました。2001年には、埼玉県本庄市に「おの・ちゅうこう文学資料館」が完成し、その業績が後世に伝えられています。

作品の特徴

小野忠孝の作品は、故郷である群馬県の自然や風土を背景にしたものが多く、子供たちの日常や心情を丁寧に描き出しています。詩においては、抒情的な言葉で自然の美しさや人間の感情を表現し、児童文学においては、温かい眼差しで子供たちの成長を見守る作品が多いのが特徴です。

主要作品

詩集
『牧歌的風景』（1932年）
『日本の教室は明るい』（1941年）
『野ばらの歌』（1969年）
『定本おの・ちゅうこう詩集』（1972年）
詩画集『望郷』（1986年）
童話・児童文学
『氏神さま』（1942年）
『風は思い出をささやいた』（1965年）
『風にゆれる雑草』（1980年）
『風とたたかう雑草』（1982年）
『風にもえる雑草』（1983年）


小野忠孝は、詩人、児童文学作家として、多くの人々に感動と希望を与え続けました。彼の作品は、今もなお、世代を超えて読み継がれています。

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