『おはよう』は、シンガーソングライターである
岡崎律子が、1998年11月6日に
スターチャイルドよりリリースした通算4作目となるオリジナル
アルバムです。前作にあたる『
Ritzberry Fields』が、自身の楽曲に加え、洋楽邦楽問わず様々なカバー曲も収録していたのに対し、本作はコンセプトを大きく転換しています。一部の楽曲を除き、
岡崎律子自身が作詞・作曲を手がけたオリジナル楽曲を中心に構成されており、彼女の創作世界がより色濃く反映された作品と言えるでしょう。
収録曲にみる多様な活動
本作に収められた楽曲の中には、後の様々な形で発表される作品の原型や、他のアーティストへの提供曲のセルフカバーなど、
岡崎律子の多岐にわたる音楽活動を示すものが含まれています。代表的な楽曲をいくつかご紹介します。
まず「愛すべき明日」という楽曲は、本作発表後、後に人気テレビアニメシリーズとなった『フルーツバスケット』のイメージ
アルバムに、新たにレコーディングされアレンジが施された新録バージョンとして収録されることになりました。このことから、
岡崎律子の楽曲がアニメーション作品の世界観と深く結びつくきっかけの一つとなったことが伺えます。さらに、この楽曲は
岡崎律子を敬愛するアーティストたちによって制作されたトリビュート
アルバム『with you』(2017年発売)においても取り上げられ、声優としても著名な
林原めぐみによってカバーされました。これは、世代や分野を超えて彼女の音楽が愛され続けている証と言えるでしょう。
次に「シンシア・愛する人(New Recording)」も注目すべき楽曲です。この曲は、当時放送されていたテレビアニメ『
アキハバラ電脳組』の挿入歌として使用され、同作品のサウンドトラックにも収録されています。しかし、本作『おはよう』に収録されている音源は、サウンドトラック盤に収録されたバージョンとは異なるアレンジで新たに録音されたものです。同じ楽曲でありながら、異なるサウンドプロダクションによって生まれ変わったこのバージョンも、本作の聴きどころの一つとなっています。
そして「Good Luck!」は、本作が発表される以前に、
岡崎律子が他のアーティストに楽曲提供したものを自身で歌唱した、いわゆるセルフカバー楽曲です。この曲は、声優・歌手として幅広く活動する
林原めぐみが1997年にリリースした
アルバム『
Irāvatī』に提供された楽曲でした。提供者自身が歌うことで、原曲とはまた違った魅力が引き出されており、
岡崎律子がソングライターとしても高い評価を得ていたことを示唆しています。
『おはよう』は、このようにオリジナル楽曲を中心に据えつつも、様々な背景を持つ楽曲が収録されており、シンガーソングライターとしてだけでなく、コンポーザー、そして他のメディアとの連携など、
岡崎律子の活動の幅広さを感じさせる
アルバムです。その後の彼女のキャリアを考える上でも、重要な位置を占める作品と言えるでしょう。