おばこ (鉄道車両)

おばこ（鉄道車両）

おばこは、かつて日本国有鉄道（国鉄）および東日本旅客鉄道（JR東日本）が保有し、主に秋田地区で運用された気動車（ディーゼルカー）を用いたジョイフルトレインの一種です。1984年（昭和59年）に誕生し、2006年（平成18年）までの長きにわたり、地域の団体臨時列車などで親しまれました。

車両の構造と編成

本車両は、当時全国各地で活躍していた国鉄を代表するディーゼルカーであるキハ28形およびキハ58形をベースに改造されました。快適性やサービス設備を向上させるための大規模な改造が施され、新たな形式であるキロ59形500番台とキロ29形500番台として登場しました。これらの改造は、当時の国鉄土崎工場、後にJR東日本秋田総合車両センターとなる施設で手がけられました。

編成は以下の3両で構成されていました。

• - 1号車：キロ59 501
• - 2号車：キロ29 501
• - 3号車：キロ59 502

誕生から愛称変更までの歴史

「おばこ」の直接のルーツとなる車両は、秋田地区での団体・臨時輸送の需要に応えるために改造・投入されました。誕生当初は特定の愛称は付けられていませんでしたが、その後のサービスの向上を目指し、車内設備などのグレードアップ改造が実施されます。この改造工事の完了後、1991年（平成3年）4月28日より「こまち」という愛称が与えられ、この名前でしばらくの間、活躍を続けました。

しかし、1997年（平成9年）3月22日の秋田新幹線開業が、本車両の愛称に影響を与えます。秋田新幹線の列車名が「こまち」と決定されたため、鉄道車両としての愛称が重複することになりました。これを避けるため、本車両は改めて愛称を変更することになり、その際に新たな愛称として「おばこ」が選ばれました。この愛称変更と同時に、車両のイメージを一新するため、車体デザインのリニューアルも行われています。

愛称「おばこ」に込められた意味

新しい愛称となった「おばこ」は、秋田県を含む東北地方の一部で古くから使われている方言に由来する言葉です。一般的には、年頃の少女や娘、特に未婚の若い女性や妹などを指す言葉として知られています。秋田の地で活躍する車両に、その地の言葉である「おばこ」という愛称を冠することで、より地域に根ざした、親しみやすい存在となることが期待されました。この愛称は、秋田美人にも通じるような、清らかで可愛らしいイメージを連想させるものと言えるでしょう。

その後の活躍と終焉

「おばこ」と改名され、装いも新たになった本車両は、その後も秋田地区を中心に団体列車や臨時列車として多くの乗客を運びました。特徴的な外観と快適な室内空間は、特別な旅の演出に貢献しました。しかし、車両の老朽化や時代の変化に伴い、その役目を終える時が訪れます。1984年の誕生から2006年までの約22年間の活躍に幕を下ろし、この車両は引退しました。

「おばこ」は、国鉄末期からJR初期にかけてのジョイフルトレインブームの中で生まれ、秋田の地で愛された車両として、その歴史に名を刻んでいます。

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