おめかしごっこ

おめかしごっこ

フランシスコ・デ・ゴヤの銅版画『おめかしごっこ』（1797-1799年）は、彼の版画集《ロス・カプリーチョス》の一部として知られる作品です。この作品は、権力の乱用や法の不正を鋭く風刺したものであり、特に支配層の腐敗や不正行為を象徴的に描写しています。ゴヤは、非現実的な魔物たちを通じて人間社会の暗い側面を暴露しようとしています。

作品の構図

この作品では、二体の怪物が対面して座っており、画面左側の怪物は鋏を操作し、もう一方の怪物が差し出した爪を切っています。興味深いのは、この鋏を持った怪物が既に自分の爪を綺麗に整えているところです。画面の中央奥には、翼を広げた三人目の怪物がいて、二体の行為を隠すように配置されています。これが象徴するのは、隠れたところでの不正行為です。

この光景は、一見すると怪物たちが人間のように見せかけるために身づくろいをしている姿のように見えます。しかし、スペイン国立図書館にある手稿によると、この作品の真意が明確に示されています。そこには、「国家の財産を盗む役人たちはお互いに助け合い、支え合う」と記載されており、怪物たちが政治家や官僚の隠れた協力関係を暗示していることが理解されます。

隠されたメッセージ

特に「爪が長い」とは「盗み癖がある」という比喩として解釈されることが多く、ゴヤは怪物たちの行為を通じて、窃盗行為を蔑視しています。画面中央の怪物の翼は、準備素描段階でのデザインとも異なり、完成版では小さく描かれています。これについては、より抽象的な風刺を目指した結果だと考えられています。

また、当初画面右には修道士の姿が描かれていたものが、完成品では裸の怪物に変わっています。この変化は、直接的な宗教批判を避けるため、またはより普遍的な視点を持たせる試みと考えられています。

来歴と所蔵

《ロス・カプリーチョス》の準備素描は、ゴヤの死後、彼の息子と孫に相続された後、画家バレンティン・カルデレラによって1861年頃に収集されました。1880年にカルデレラが亡くなると、プラド美術館が作品を購入し、現在はそこで鑑賞することができます。

この版画は、ゴヤの独特な視点を通じて、権力と不正がどのように絡み合っているかを示しており、現代にも通じる重要なメッセージを持っています。彼の作品を通して、そのメッセージを深く理解することができます。

参考文献

• - ホセ・マヌエル・マティーリャ、大高保二郎『プラド美術館所蔵 ゴヤ ― 光と影』読売新聞東京本社（2011年）

プラド美術館公式サイトを訪問することで、作品の詳細をより理解することができます。

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