おらおらでひとりいぐも

小説『おらおらでひとりいぐも』

若竹千佐子による小説『おらおらでひとりいぐも』は、2017年に河出書房新社から発表され、2020年に文庫化された作品です。この作品は、第54回文藝賞および第158回芥川龍之介賞を受賞しており、発表からわずか数年で累計発行部数は50万部を超えるなど、非常に高い評価を受けています。

物語の背景

物語の主人公は、75歳の老女、日高桃子です。桃子は夫に先立たれて日々の生活を送っており、娘との関係も疎遠です。桃子は、寂しさを感じつつも、次第に脳内で他者との会話を始めるようになります。この内面的な独り言は、「寂しさ1〜3」という擬人化された存在が代弁し、桃子の心の声として物語を彩ります。

桃子の思い出にふける日々

桃子は、過去の記憶をたどります。1964年、彼女は田舎を離れ、上京して食堂で働いていました。そこで出会った常連客の周造と結婚し、二人は平穏な日々を過ごします。しかし、その後の人生で様々な困難に直面し、特に夫の死によって孤独感が増していく桃子。

寂しさとの対話

最初は無視していた「寂しさたち」ですが、次第に彼女の心の声として成長し、桃子との掛け合いのような賑やかな交流に発展します。生きる意味を求める桃子は、自身の過去の幸せな思い出や家族との関係を振り返りながら、彼女の心の声との対話を進め、妄想の世界へと浸っていくのです。このプロセスで、桃子はふと「周造の計らい」があったことを実感し始め、自分の人生がどのように形づくられてきたのかに思いを馳せます。

映画化とその影響

この小説は、2020年に映画化され、沖田修一が監督を務めました。映画では田中裕子が主役の桃子を演じ、彼女自身の過去を振り返りながら、観客に深い共感を呼び起こします。放映当初は第33回東京国際映画祭で特別招待作品として上映され、話題となりました。主演の田中裕子は7年ぶりの映画出演となり、彼女の演技力が多くの観客に感動を与えました。

最後に

『おらおらでひとりいぐも』は、孤独感を持つ高齢者の心情を豊かに描いた作品であり、一人の女性の内面の旅を通じて「生きる意味」を問い直すようなストーリーです。桃子の心の声たちとの交流は多くの読者に共感されています。活力に満ち、前向きなメッセージを持ったこの作品は、読む人に深い感動と考えさせる余韻を残します。

もう一度検索