芥川龍之介賞

芥川龍之介賞について

芥川龍之介賞、一般に芥川賞として知られるこの文学賞は、芸術的な評価に基づいて短編または中編の作品に贈られる賞です。文藝春秋によって運営され、日本文学振興会の協力の下で選考が行われています。芥川賞は、正式な発表がこれまでの該当者を持たない短編と中編を対象にしているため、掌編小説が対象にはなりません。

歴史的背景

この賞は、大正時代の小説家、芥川龍之介の業績を讃えるために1935年に設立されました。設立者である菊池寛は、同年に直木三十五賞とともにこの賞を創設しましたが、当初は注目されることなく過ごしていました。受賞作品が新聞に取り上げられることも少なく、受賞者の名声はそれほど高くありませんでした。しかし、1956年に石原慎太郎が受賞したことを契機に、賞の知名度は一気に高まりました。この作品は社会現象を巻き起こし、以降は受賞作が注目を集めるようになりました。

1945年から1949年にかけては、第二次世界大戦の影響で一時的に中断されたものの、1949年に復活し、以降定期的に受賞者が選ばれるようになりました。現在は、年間二回発表が行われ、受賞作は『文藝春秋』に取り上げられることが通例です。受賞者には懐中時計が贈られ、現在は副賞として100万円が与えられています。

選考プロセス

芥川賞の選考は、文藝春秋の社員から構成される選考スタッフによって行われます。上半期の作品は前年の12月からその年の5月まで、下半期の作品は6月から11月までが対象となります。スタッフは、各班に分かれ作業を行い、班会議を経て最終候補作を絞り込みます。最終的には、各選考委員が作品に対する評価を行い、合議によって受賞者が決まります。

新人作家への重視

芥川賞は「新人」作家を対象にしているため、その基準は厳格です。選考委員の間でしばしば議論の的になるのが、何をもって「新人」とするかという点です。また、作品の長さについては特に明確な基準は存在しませんが、一般的には原稿用紙300枚以内が望ましいとされています。

受賞作の社会的影響

受賞作は、その内容や著者によって社会的に大きな影響を与えることがあります。特に若手作家による作品が受賞した際には、メディアでの注目が集まります。代表的な受賞作には、綿矢りさの『蹴りたい背中』や又吉直樹の『火花』があり、これらの作品はそれぞれが多くの読者に支持され、ベストセラーになりました。

批判と改善の提案

一方で、芥川賞に対する批判も少なくありません。特に選考が終身制であることが指摘され、選考委員が同じ顔ぶれであるために新しい視点が欠けるとの声もあります。これを受けて、選考委員の任期を定める提案も出されています。

最後に

芥川賞は、日本における重要な文学賞のひとつであり、多くの若手作家にとって晴れの舞台であるとともに、その作品を通じて新しい文芸の地平を切り開く契機とされています。この賞の行く先には、今後も文学界の動向が深く関わってくることでしょう。

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