おんな船頭唄

「おんな船頭唄」

三橋美智也の代表曲の一つとして知られる「おんな船頭唄」（おんなせんどううた）は、1955年にキングレコードよりシングル盤として発表された楽曲である。日本の歌謡史にその名を刻む大ヒットとなり、歌手・三橋美智也のキャリアにおける決定的な転機をもたらした。

制作経緯と楽曲の決定

この楽曲の誕生には、特別な背景がある。当初、「おんな船頭唄」は、当時のキングレコードに所属していた若手歌手、西村つた江のために準備が進められていたものであった。しかし、ディレクターを務めていた掛川尚雄は、この楽曲の持つ独特な雰囲気、特に高音から始まる印象的なメロディーラインに注目した。そして、この難しい高音域を歌いこなせるのは三橋美智也しかいないと判断し、彼に歌唱を託すことを強く推し進めたのである。この掛川の一存とも言える英断が、後に歌謡界を揺るがす大ヒットを生むことになる。

空前のヒットと三橋美智也の飛躍

1955年にリリースされたシングル盤では、照菊が歌う「逢初ブルース」がA面、三橋美智也の「おんな船頭唄」がB面として収録されていた。しかし、世間の評価はB面である「おんな船頭唄」に集まり、従来のA面/B面|A面_B面の関係を覆すほどの人気を獲得する。最終的なセールス枚数は200万枚を超えるという、当時の歌謡曲としては驚異的な数字を記録し、空前の大ヒットとなった。この「おんな船頭唄」の成功により、三橋美智也は一躍国民的スターの座に躍り出た。本作のヒットを皮切りに、彼は立て続けにヒット曲を生み出し、名実ともに昭和歌謡界を代表するトップ歌手として、その後の輝かしい全盛期を築いていくことになる。この楽曲は、単なる一ヒット曲というだけでなく、三橋美智也という偉大な歌手のキャリアを決定づけた記念碑的な作品と言える。

映画化とその影響

楽曲の爆発的な人気を受けて、その翌年である1956年には、日活によって同名のタイトルで映画化が実現した。この映画は楽曲の世界観を映像で再現し、ファンにとって大きな話題となった。さらに、この映画には三橋美智也自身も出演しており、艶歌師・三田道也という役柄を演じ、俳優としての魅力も披露した。

後世への顕彰

「おんな船頭唄」は、時を経ても多くの人々に愛され続けた。その功績を称え、リリースから40年以上が経過した1998年6月7日には、楽曲の情緒とゆかりのある土地、千葉県香取市（当時は佐原市）にある佐原市立水生植物園（現在の名称は水郷佐原あやめパーク）に歌碑が建立された。この歌碑の建立は、数多くの金字塔を打ち立てた三橋美智也にとって、これが初めてのものであった。盛大に除幕式が行われた歌碑は、現在、同パークの正面ゲート脇に設置されており、訪れる人々にこの不朽の名曲と共に、三橋美智也の偉大な功績を今に伝えている。

シングル収録曲

• - 逢初ブルース

歌唱：照菊
作詞：矢野亮
作曲：山口俊郎

• - おんな船頭唄

歌唱：三橋美智也
作詞：藤間哲郎
作曲：山口俊郎

もう一度検索