お前、いつもの顔で笑うから泣いちまったよバカヤロー。

2005年に公開された日本映画『お前、いつもの顔で笑うから泣いちまったよバカヤロー。』は、俳優として活動する稲葉信隆が初めて監督と主演を務めた意欲作です。

本作は、誰もが一度は経験するかもしれない青春期特有の、どこか不器用ながらも心温まる友情の物語を描いています。

物語の始まりは、人生で最も残酷ともいえる方法で失恋してしまった主人公・真二（稲葉信隆）が、コンビニエンスストアで偶然、古くからの親友である洋平（片山享）と再会するところから展開します。打ちひしがれ、明らかに様子がおかしい真二のただならぬ気配を敏感に察知した洋平は、彼を連れて海へと向かいます。変化を求めるかのように広がる海の景色の中で、二人の間に流れる時間を通して、失意の底にある真二が親友の温かい存在によって少しずつ立ち直っていく姿が丁寧に描かれます。

この映画は、その普遍的なテーマと誠実な描写が高く評価されました。特に、第1回松竹・BIGLOBE共催で開催された映画祭「C'NEXT」においては、並み居る応募作品の中で圧倒的な支持を獲得し、栄えあるグランプリと審査員特別賞を同時受賞するという快挙を成し遂げました。映画祭での受賞は、文字通り他の追随を許さない大差での決定だったと伝えられています。また、授賞式においては、その感動的な内容と受賞を称える観客からの惜しみないスタンディングオベーションが会場を包み込み、作品への高い評価と期待を印象付けました。

劇場公開後、本作はより多くの観客に届けられることになります。2007年2月には、アムモからリリースされたオムニバス短編集DVD『Tanpen』の一編として収録され、レンタル及び販売が開始されました。これにより、単館上映などで観る機会が限られていた人々にも、この心に響く青春ドラマが届けられることとなりました。

本作を支えたスタッフ陣には、監督・主演を務めた稲葉信隆に加え、企画を片山享と共に担当した稲葉信隆、脚本も兼任した稲葉信隆、撮影にボブ鈴木、照明に山口俊一、記録に小浜公子、編集に加藤正志、そして挿入曲を手掛けた花澤孝一といった面々が名を連ねています。特別協力として、辻岡正人、野口照夫、主力会がクレジットされています。

『お前、いつもの顔で笑うから泣いちまったよバカヤロー。』は、華々しい舞台で繰り広げられる出来事ではなく、日常の中でふと訪れる人生の挫折と、それを支える揺るぎない友情の尊さを描いた作品です。失恋という誰もが経験しうる普遍的な痛みを起点としながら、親友との絆を通して立ち直る主人公の姿は、観る者に温かい共感と感動を与えます。初監督作品にして高い評価を受けた稲葉信隆の手腕と共に、そのリアリティあふれる描写と登場人物たちの心情の機微を丁寧に捉えた演出は、多くの観客の心に深く刻まれました。青春時代の「歯がゆさ」と「温かさ」が交錯する、珠玉の友情物語として、今なお多くの人々に記憶されている作品と言えるでしょう。

スタッフ

企画：稲葉信隆、片山享
脚本・監督：稲葉信隆
撮影：ボブ鈴木
照明：山口俊一
記録：小浜公子
編集：加藤正志
挿入曲：花澤孝一
特別協力：辻岡正人、野口照夫、主力会

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