片山享

俳優であり映画監督でもある片山享（かたやま りょう）は、1980年9月14日、福井県鯖江市に生まれた。所属事務所はHigh endzである。地元では由緒ある家柄の出身として知られるが、その環境に息苦しさを感じ、やがて俳優という表現の世界に憧れを抱くようになる。

福井県立武生高等学校、順天堂大学スポーツ健康科学部を卒業。学生時代は熱心に野球に取り組み、投手として最速144km/hを記録するほどの高い身体能力を持っていた。俳優への思いは強く、物心ついた頃から「俳優になりたい（wanna be）」ではなく「俳優になるもんだ（will be）」と確信していたという。その決意は、後述するような俳優活動への道筋にも表れている。高校時代には、後に北陸放送（MRO）のアナウンサーとなり、『恋のから騒ぎ』12期生としても知られる白崎あゆみと先輩後輩の関係であったことを、白崎のラジオ番組出演時に明かしている。

俳優としてのキャリアは、20歳の時に俳優養成所に通い始めたことから始まる。大学を卒業した2003年には本格的に活動をスタートさせた。俳優になるため、自ら制作会社などに売り込みに行った経験も持つ。その過程では、長時間にわたる説教を受けたり、目の前でプロフィールを捨てられたりと、都会の厳しさを痛感する出来事にも遭遇したが、それらを乗り越え、表現者としての道を切り拓いていった。

俳優として多数の映画、テレビドラマ、舞台、CM、PVなどに出演している。映画では『ラストゲーム 最後の早慶戦』で慶應義塾大学野球部主将の阪井隆信役を演じたほか、『百円の恋』、『検察側の罪人』、『七つの会議』といった話題作にも名を連ねる。テレビドラマでは『ルーズヴェルト・ゲーム』、『天皇の料理番』、『孤独のグルメ』など多様な作品に出演。舞台でも中津留章仁主宰のトラッシュマスターズ公演をはじめ、精力的に活動している。自動車教習所の学科ムービーに出演していることも、彼の活動の幅広さを示すユニークな一面である。

地元福井県でも、地方誌である月刊URALAやZOUSSで紹介され、NHK福井放送局では片山享を特集した番組が組まれるなど、郷里からも注目を集めている。2005年には、シンガーソングライターである実姉のナオリュウと共に、当時の鯖江市長である牧野百男氏を表敬訪問している。また、同郷の俳優である津田寛治がTV Bros.に連載していたコラム「津田塾」にて、若手俳優として紹介され、津田の役作りのために共にSMクラブを訪れたエピソードが語られるなど、ユニークな交流も持つ。

2017年からは、俳優として培った経験を活かし、映画監督としての活動も開始した。短編映画からキャリアをスタートさせ、精力的に作品を発表。2020年2月には、東京の池袋シネマ・ロサにて、約1ヶ月にわたる異例の監督特集上映が組まれた。この特集では、『名操縦士』『いっちょらい』『生きる、理屈』『つむぐ』『未来の唄』『轟音』の計6本の監督作品が劇場公開された。

特に初の長編監督作品である『轟音』は、国内外で高い評価を獲得している。北米最大の日本映画祭であるJAPANCUTSのコンペティション部門「NEXTGENERATION」に選出されたのをはじめ、スペインのシッチェス映画祭ブリガドーン部門、ドイツ・ハンブルク日本映画祭、オーストリア・ジャパニュアル、セルビア・日本セルビア映画祭など、多数の国際的な映画祭に選出されている。その後も安楽涼監督との共同監督作『まっぱだか』など、コンスタントに長編映画を監督し続けている。

関西方面の一部地域では「やーまん」という愛称で親しまれているという片山享。俳優として数多くの作品で存在感を示しながら、映画監督としても独自の視点で物語を紡ぎ出し、国内外で注目を集めている。表現への強い意志と、多角的な才能を武器に、精力的な活動を続けている。

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