お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方

お終活 シリーズ

『お終活 熟春！人生、百年時代の過ごし方』（2021年）と、その続編である『お終活 再春！人生ラプソディ』（2024年）からなる、香月秀之が監督と脚本を手がけた日本の映画シリーズ。

人生のエンディングや熟年からの生き方を題材に、家族間の絆や葛藤、そして新たな一歩を踏み出すことの大切さを、軽妙なタッチで描くヒューマンコメディとして製作されました。

『お終活 熟春！人生、百年時代の過ごし方』

2021年に公開されたこの作品は、「終活」を主要なテーマに据えています。

IT企業を退職し、葬儀社で働き始めた菅野涼太は、過去の出来事から父親との関係が疎遠になっています。一方、専業主婦として長年を過ごした大原千賀子は、定年退職後も家事を手伝おうとしない夫・真一に不満を募らせていました。

ある日、涼太が関わる終活フェアのチラシを目にした千賀子は、興味本位で参加し、棺桶の体験や相続手続きについて学びます。妻との会話が失われたことに気づいた真一は、ぎこちなく千賀子に話しかけようとしますが、うまくいきません。終活フェアで千賀子が当選した「メモリアル映像」の話題が出ると、真一は夫婦の思い出の映像を作ることに強く反発します。

涼太は葬儀の仕事について父親から皮肉を言われ落ち込みますが、仕事への向き合い方を先輩に諭されます。そんな時、長らく音信不通だった父親が涼太を訪ねてきますが、再婚報告と和解を求める父を冷たく追い返してしまいます。

千賀子は友人たちとの会食中に倒れ、脳梗塞と診断されます。幸い軽症で済みましたが、この出来事は真一に老いを痛感させます。真一は夫婦のアルバムを手に涼太の葬儀社を訪れ、メモリアル映像の制作を依頼します。退院した千賀子は、真一の兄の訃報に接し、夫婦で「人生百年時代」をどう過ごすか考えるようになります。娘の亜矢は両親の金婚式を計画し、涼太の葬儀社にプロデュースを依頼。思い出の会場で盛大な金婚式が催され、涼太が編集したメモリアル映像も披露されます。金婚式を経て、涼太は父親に和解の電話をかける決心をします。

本作は2021年5月21日に公開されましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、主要都市の映画館が休業するなど、観客動員に苦戦を強いられました。しかし、公開後には映画サイトで高い評価を獲得しています。

主なキャストには、水野勝、剛力彩芽、松下由樹、藤吉久美子、大島さと子、増子倭文江、福井裕子、尾崎明日香、鶴見萌、松中みなみ、島崎義久、北島美香、今枝桜、齋藤光、原結里、藤田宗久、高岡智子、市村亮、竹内雅挙、健人・A、麻里万里、Tina、Maria Christina Colico、SChon Duria、和泉ちぬ、武元純平、山崎健二、小川隆市、佐々木みゆ、小林綾子、袴田吉彦、石丸謙二郎、金田明夫、大和田伸也、螢雪次朗、西村まさ彦、石橋蓮司、そして高畑淳子と橋爪功が名を連ねています。

『お終活 再春！人生ラプソディ』

シリーズ第2弾として、2024年5月31日に公開されました。本作では、「再春」という、熟年期に再び青春時代の夢を追いかける考え方が描かれます。

娘の亜矢と涼太の結納の日、真一が場所を忘れて大幅に遅刻したことから、家族は彼の認知症を心配し始めます。終活フェアで「再春」の概念を知った千賀子は、青春時代に目指したシャンソン歌手の夢を再び追いかけることを決意。かつての恩師を訪ねますが、既に亡くなっており、その遺骨は近代的で美しい納骨堂に納められていました。

恩師の娘である英恵は、母の音楽学校を継いでおり、千賀子のレッスン再開を勧めます。千賀子はライブで「愛の讃歌」を歌う夢を抱きます。一方、妻が「生前整理」で家を片付けたり、レッスンで家を空けたりすることに不満を漏らす真一。暇を持て余す真一のため、デイサービス利用を検討するために要介護認定を受けると、要介護1と認定されます。

デイサービスに通い始めた真一は、そこで涼太の父である施設長・菅野敬一と出会います。施設には亜矢も栄養士として勤務しており、新しい入所者の画家・五島から油絵を贈られます。その絵に描かれた女性が若い頃の母親だと気づいた英恵は、長年会っていなかった父である五島と再会し、和解を果たします。

敬一は草野球チームの監督もしており、子供の頃に野球選手を夢見ていた真一に一日だけ監督を任せます。涼太も巻き込んだ破天荒な采配ながらチームは勝利し、真一は少年時代の夢と若くして亡くなった父を思い出します。敬一もまた、疎遠だった涼太との関係を深めるきっかけを得ます。

千賀子はシャンソンライブでの発表を目指してレッスンに励みますが、ライブ開催が困難になります。涼太がイメージアップのために葬儀社としてライブのスポンサーとなり、無事に開催が実現。千賀子は自ら歌詞を考えた「愛の讃歌」を歌い上げ、夫・真一との人生を表現します。

本作の主なキャストは、高畑淳子、剛力彩芽、松下由樹、水野勝、西村まさ彦、石橋蓮司、藤吉久美子、増子倭文江、LiLiCo、窪塚俊介、勝俣州和、橋本マナミ、藤原紀香、大村崑、凰稀かなめ、長塚京三、橋爪功らが出演し、三浦友和が特別出演しています。多くのキャストが前作から引き続き出演しています。

両作品ともに、人生の終盤という節目を、家族の視点から、そして本人の新たな挑戦という視点から、温かく人間味豊かに描いています。

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