お荷物小荷物

ドラマ『お荷物小荷物』の全貌

『お荷物小荷物』（おにもつこにもつ）は、1970年10月17日から1971年2月13日まで朝日放送（ABC）制作でTBS系列で放送されたドラマです。この作品は、当時としては異例なシュールなブラックユーモアを取り入れたアバンギャルドなテレビ番組とされ、舞台設定やストーリーの展開において「脱・ドラマ」と「脱・ホームドラマ」の要素が色濃く表れています。

概要と特徴

本作は、社会問題を扱いながらも従来のテレビドラマの枠を大きく超えた内容です。主人公の中山千夏がハンドマイクを持ち、共演者やスタッフにインタビューをする場面があるなど、観る者を飽きさせない工夫がなされていました。また、作品中では沖縄県の基地問題やアイヌ問題、天皇制などのテーマが扱われ、社会派作品としての側面も持ち合わせています。

作品のキャッチフレーズ「超えてる人たちです」は、フランス映画『彼女について私が知っている二、三の事柄』からの影響を受けたと言われ、各話にはそれぞれのテーマに基づくサブタイトルが設けられています。最終回では特に「18・19、最終回」というユニークなサブタイトルが付けられ、これにより通常の放送枠を超えた形での進行が行われました。

あらすじ

物語は東京の下町、「滝沢運送店」を中心に展開します。滝沢忠太郎を筆頭に、7人の男性から成る家族が運営するこの運送店は、男尊女卑がモットーの色濃い職場です。ここに、沖縄から上京した「田の中菊」という女性が住み込みのお手伝いとして働き始めます。彼女の正体は「今帰仁菊代」で、前作業員の洋子の妹です。姉の復讐と甥を家族に認知させるために、菊は運送店での生活を始めます。

菊は、男たちの厳しいしごきに耐えながらも、空手の腕前を駆使し、少しずつ彼らの心をつかんでいくのです。このように、物語は単なる家族ドラマではなく、男女の権力や社会の問題にも鋭く切り込んでいきます。

制作と評価

制作は朝日放送が担当し、各話はABCセンターで収録されました。制作の過程で、脚本家の佐々木守は最初から「脱・ドラマ」を意識していたわけではなく、新たな表現手法を模索するなかで自然にエスカレートしていったと述べています。その結果、視聴者からの評価は賛否を呼び、「有害番組」との批判も受けましたが、一方で多くのファンを魅了しました。

音楽とキャスト

劇中音楽の作曲は新進ジャズピアニストの佐藤允彦が手掛けており、特にオープニングテーマは後のアーティストにも影響を与えました。メインキャストには志村喬や桑山正一、浜田光夫などの面々が名を連ね、多彩な演技を見せています。

』お荷物小荷物』は、今では円盤などの形式で復元されておらず、過去の映像はほとんど消去されてしまいましたが、最終回は横浜の放送ライブラリーで見ることが可能です。これにより、視聴者は当時の斬新なスタイルと社会的メッセージを再確認することができます。

本作品は、日本のテレビドラマの多様性と可能性を感じさせる重要な作品として、今なお語り継がれています。

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