かくも長き不在

映画『かくも長き不在』の紹介

『かくも長き不在』（フランス語：Une aussi longue absence）は、1961年に公開されたフランスのドラマ映画です。この作品は、ルイ・デリュック賞および第14回カンヌ国際映画祭においてパルム・ドールを受賞するという名誉を与えられました。これにより、映画は国際的な注目を浴び、その影響力は今なお根強いものがあります。特に、日本では1964年に公開され、キネマ旬報の「外国映画ベスト・ワン」に選ばれるなど、多くの評価を得ています。

特徴的なのは、本作の主題歌「三つの小さな音符」であり、作詞はアンリ・コルピ、作曲はジョルジュ・ドルリューが手掛け、歌唱はコラ・ヴォケールが担当しました。この音楽は映画の雰囲気を一層引き立て、観客の心に深く残るものです。

映画の映像ソフトについては、VHSやレーザーディスク版が過去にリリースされましたが、DVD化は長らく行われませんでした。しかし、2018年3月23日に初めてDVDとBlu-ray版が発売され、多くのファンが待ち望んだ作品を手に入れることができるようになりました。

ストーリー

映画は、パリ郊外でカフェを営む女性、テレーズを中心に展開します。彼女の日常は、ある浮浪者と出会ったことから一変します。その男は、彼女が16年前にゲシュタポに強制連行され、行方不明になった夫アルベールに非常に似ています。テレーズは、運命的な出会いを感じ取り、その男との接触を試みますが、彼は記憶喪失の状態にあります。

テレーズは彼を尾行したり、会話を交わしたりする中で、アルベールである可能性が高まっていくのを実感します。彼女は、アルベールの叔母や甥を呼び寄せて会わせるも、確たる証拠は得られません。彼女は、夜に浮浪者を自宅に招待し、共に食事やダンスを楽しむ中で、かつての幸福な記憶がよみがえる瞬間に涙を浮かべます。しかし、残念ながら、この浮浪者は自らの記憶を呼び戻せず、気持ちが整理できないままテレーズの前から姿を消そうとします。

その後、テレーズや近所の人々が「アルベール」と呼びかけるも、男は一瞬立ち止まるだけで逃げ出してしまいます。テレーズは意識を失い、目が覚めると周囲の人たちから「彼は無事で、どこかへ行ってしまったらしい」と告げられます。

最後に、テレーズは「冬を待つわ。寒くなったら戻るかもしれない」とつぶやきます。この言葉は彼女の愛と希望を象徴しており、物語全体におけるテーマを強く反映しています。

キャスト

この映画には、テレーズを演じるアリダ・ヴァリや、浮浪者役のジョルジュ・ウィルソン、その他のキャストとしてシャルル・ブラヴェットやジャック・アルダンも出演しています。彼らの演技力が映画の深い感情を引き立て、物語に一層の厚みを与えています。

書籍情報

本作は小説としても展開されています。マルグリット・デュラス／ジェラール・ジャルロの『かくも長き不在』が阪上脩訳で1993年にちくま文庫から出版されました。また、元版として『ヒロシマ 私の恋人／かくも長き不在』もあり、こちらは筑摩書房から1970年および1985年に新装版が出版されています。

『かくも長き不在』は、映画と文学の双方で今なお多くの人々に愛され続けています。

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