かげろう絵図

『かげろう絵図』の概要



松本清張による長編時代小説『かげろう絵図』は、1958年から1959年にかけて『東京新聞』夕刊に連載された作品です。二巻の単行本は1959年に新潮社から出版され、江戸時代の大御所・徳川家斉の治世最後の年を背景にしています。物語は、江戸城の大奥で権力を巡る勢力の抗争と、腐敗を撲滅しようとする者たちとの対決を描いています。

あらすじ



春の日、江戸城の吹上の庭では大御所・徳川家斉を迎え、華やかな観桜会が開催されました。この場で大奥女中たちが歌くらべを行い、お美代の方と多喜の方の熾烈な競争が繰り広げられました。結果的に、多喜の方の歌が認められ、彼女は桜の枝に歌を結ぼうとしましたが、踏台から転落してしまいます。不運にも、彼女は流産し、そのまま亡くなってしまうのです。この事件を機に、大奥内は大騒動となりました。

その間、お美代の方の意向により、最近大奥に奉公を始めた雑用女中・登美が、中年寄の菊川の部屋附に任命されました。一方、無役の旗本である島田又左衛門は脇坂淡路守の屋敷を訪れ、現大奥の政治の弊害について報告します。彼は中野播磨守石翁の裏の意図があることも示唆しました。又左衛門の甥・新之助は、叔父の行動を懸念しますが、その周辺には謎の人物が現れ始めます。

新之助と町医者の良庵は叔父の身を案じて動き出しますが、次第に彼らは知らぬ間に権力の陰謀に巻き込まれてしまいます。やがて、大御所が病に倒れ、大奥の周囲で様々な謀略が進行し始めます。続発する事件に新之助たちは立ち向かい、知恵を尽くしての攻防が繰り広げられます。果たして、勝利を手にするのは誰なのでしょうか。この戦いのクライマックスには、ある真実が新之助の目に映ることになります。

登場人物



本作には様々な魅力的なキャラクターが登場します。島田新之助は、旗本の次男坊でありながら、ぶらぶらとした生活を送りつつも卓越した頭脳と身体能力を持つ23歳の青年です。彼の叔父である又左衛門は、麻布に住む無役の旗本。彼は大奥内の権力争いに対する強い思いを抱いています。

また、大奥の権力を握るお美代の方や、多喜の方、徳川家斉は、この物語の核心を成す重要なキャラクターです。彼らの関係とそれぞれの動きが物語をダイナミックに展開させます。

映画テレビドラマ



『かげろう絵図』は1959年に映画化され、その後も数回のテレビドラマ化が行われました。1960年版、1983年版、2016年版と、異なる時代に映像化されたことで、多様な解釈が生まれました。特に2016年版では、登美を主役に据えたことが新たな視点を提供しています。

松本清張の『かげろう絵図』は、権力と人間の欲望、そしてそれに伴う陰謀を描いた作品であり、その深い社会性や人間ドラマが今も多くの人々に愛されています。

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