旗本

旗本とは

旗本（はたもと）は、最初に戦場で主将の護衛を担った武士団を指しますが、江戸時代の文脈では、徳川将軍家の直臣のうち、石高が1万石未満ながら「御目見」と呼ばれる家格に達している武士を指します。これに対し、主人を大名と呼び、その正妻を奥様と称しますが、「御目見」以下の家臣は一般的に御家人と呼ばれています。

戦国時代の旗本の役割

戦国時代においては、主君に直属する部隊の家臣としての性格が強く、主に譜代の家臣で構成されていました。彼らは戦闘時に主君の本陣を守り、その信頼を受けて中央的な役割を果たしました。旗本の家臣層は、上杉謙信の家臣のように常に本陣に配置されることが多く、名声を残すことは少なかったものの、その役割は非常に重要でした。

江戸時代：旗本の定義と数

江戸時代における旗本は、将軍の直臣の中で、禄高が1万石未満であり「御目見」以上の家格に属する者です。一方、「御目見」が許されない者は御家人と称され、両者を合わせて直参（じきさん）と呼びます。江戸時代の初期には「旗本」は幕臣一般の総称として広く使われましたが、17世紀後半から二つの層が明確に区分されるようになりました。寛政年間には、旗本の数はおよそ5300人とされ、その中には陪臣も含まれ「旗本八万騎」と呼ばれることもあります。

旗本の出自は主に三河以来の譜代家臣に加え、戦国期に徳川家に編入された地方武士や名家の子孫など、様々です。

旗本の役職と職務

旗本の職務は主に二つの分野に分かれます。ひとつは軍事を担当する「番方」であり、江戸や大阪の城を警護する役職や将軍に随従する役割が含まれます。もう一つは行政を司る「役方」として、町奉行や勘定奉行などの役職があり、幕府の行政に寄与しました。こうした役職に就くことにより、足高の支給や様々な官位が与えられることもあります。

旗本の俸禄とその生活

旗本の俸禄は通常200石以上であり、それ以下の場合は御家人や一代抱えとされます。俸禄の形態には「知行取」と「蔵米取」が存在し、この区別は旗本の生活に大きな影響を及ぼしました。知行取は、農民から年貢を徴収する形で領地を持つ地位であり、特に3000石を超えると領地支配を直接行うことが求められました。

一方、蔵米取は幕府が直接管理する年貢を受け取る形式で、支給される米の額はその者の地位や役職によって異なります。旗本は知行取であることが多く、生活は常に倹約を強いられるものでしたが、特に200石級の旗本は非常に厳しい生活を余儀なくされました。

明治維新後の変遷

明治維新に際して、元将軍の徳川慶喜が旗本たちに新しい体制への参加を促し、多くの旗本が朝臣となる道を選びました。彼らは「早期帰順者」として評価され、一部は本領での地位を安堵されましたが、次第にその権限は府県に移っていきました。これにより、旗本たちの封建領主としての地位は消失し、家禄の解体が進められました。最終的には1876年の秩禄処分により、旧武士たちは平民化し、自己の力で生活を求めることが求められました。

まとめ

旗本の制度は、日本の戦国時代から江戸時代を経て、明治維新に至るまで大きな変遷を遂げました。元々は主君に従う武士団として設立され、その後、特定の政治的・軍事的役割を持つ家臣として確立しましたが、最終的には封建制度の解体と共に平民化しました。この過程は、古い身分制度の終焉と新たな時代への移行を象徴しています。

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