かじ町プラザ

かじ町プラザは、静岡県浜松市中央区鍛冶町に所在する複合商業施設です。浜松駅にも近い中心市街地に位置しています。

歴史と変遷

この施設の歴史は、1987年（昭和62年）7月2日に開業したイトーヨーカドー浜松駅前店に遡ります。当時、これは「浜松ショッピングプラザ」の中核店舗として位置づけられ、約16,700平方メートルという広大な売場面積を有していました。地域における主要な商業施設の一つとして営業を続けていましたが、周辺地域に競合する大型商業施設が相次いで開業した影響もあり、売上は徐々に低迷していきました。そして、開業からおよそ20年後の2007年（平成19年）1月14日、イトーヨーカドー浜松駅前店はその歴史に幕を下ろしました。

イトーヨーカドー閉店後、その広大な跡地の活用方法を巡っては、様々な企業の思惑が交錯し、極めて複雑な状況が生まれました。当初、大手ハウスメーカーである大和ハウス工業が、商業施設、ホテル、そしてマンションから成るツインタワーの建設計画を公表しました。しかし、これと並行して、別の不動産会社であるセボンも跡地をマンションとして開発する計画を進めており、土地および建物の権利を巡る対立が生じる事態となります。さらに、中堅不動産会社のジョイント・コーポレーションや、地元浜松の建設業者であるコウノイケなども跡地の取得を目指し、開発事業者の選定は難航を極めました。その後の2008年に発生した世界的な経済危機であるリーマン・ショックの影響による市況の悪化に加え、前述のセボンやジョイント・コーポレーションといった関係企業の相次ぐ経営破綻により、跡地開発計画は一時的に宙に浮いた状態となりました。このような混迷を経て、最終的には地元の不動産会社であるアサヒコーポレーションが土地建物を取得し、既存の建物を改修する形で新たな複合商業施設として再生させる道を選びました。

施設の再生後、新たなテナントの誘致が進められました。2009年（平成21年）5月14日には1階に食品スーパーのパレマルシェが出店しましたが、残念ながらわずか半年足らずの同年12月6日には営業を終了するという短い期間での撤退となりました。一方で、同年7月1日にはホテルセンチュリーイン浜松が開業し、こちらは後にホテルリブマックス浜松駅前へと運営が引き継がれています。

場外馬券場の開設と地域における議論

かじ町プラザの再生において、特に地域内で大きな議論を呼んだのが、場外勝馬投票券発売所の開設計画でした。まず、JRA（日本中央競馬会）の場外馬券場である「エクセル浜松」の誘致構想が持ち上がります。この計画に対して、浜松市中心街の活性化の起爆剤になると期待する鍛冶町地区の一部の商店関係者からは賛成意見が多く聞かれました。しかし、かじ町プラザの一部地権者や周辺の住民、さらには近隣の他の商店街からは、治安や風紀の悪化につながるのではないかという強い懸念を理由に反対意見も根強く存在しました。この賛否両論が交錯する中、協議の結果、場外馬券場は有料会員制とし、主に週末のみの営業とすることで、懸念される問題は生じないとの判断がなされ、かじ町プラザが立地する鍛冶町自治会が最終的に開設を了承しました。こうして、2011年（平成23年）8月13日、エクセル浜松は営業を開始する運びとなりました。

さらにその後、南関東公営競馬（川崎競馬、大井競馬、船橋競馬、浦和競馬）の場外馬券場計画も具体化します。そして2013年（平成25年）2月25日には、川崎競馬場の運営により、こちらも会員制の場外馬券場である「ジョイホース浜松」が開設されました。しかし、ジョイホース浜松はその後、2023年（令和5年）1月6日をもって営業を終了しています。

現在の主なフロア構成

2023年1月以降の状況に基づくと、かじ町プラザの現在の主なテナント構成は以下のようになっています。

6階: ホテルリブマックス浜松駅前
5階: アサヒグループ本社事務所
4階: エクセル浜松（主に土曜日・日曜日に営業しています）
3階: XCUBE
2階: 現在は空きフロアとなっています。
1階: 中ノ庄（飲食店）、株式会社アトラックなどが入居しています。
* 地階: 現在は空きフロアとなっています。

かじ町プラザは、浜松中心市街地の大型商業施設の盛衰、複雑な土地権利問題、経済状況の波、そして場外馬券場誘致を巡る地域社会の議論など、様々な要素が絡み合ったその歴史を通じて、街の変遷を示す施設の一つと言えるでしょう。

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