かとり型巡視船

かとり型巡視船：日本の沿岸警備を担う中堅巡視船

かとり型巡視船は、海上保安庁が運用する500トン型の中型巡視船です。分類上はPM型（Patrol Vessel Medium）にあたり、2010年代半ばから建造が進められました。

誕生の背景

1970年代、日本の領海警備の必要性増大を受け、海上保安庁は多数の巡視船建造に着手しました。その後、既存の中型巡視船の老朽化と、尖閣諸島周辺海域における緊張の高まりを受け、新たな中型巡視船の必要性が認識されました。1000トン型の大型巡視船（PL）の整備が優先された後、2014年度からかとり型巡視船の建造が開始されたのです。

設計と性能

本型は、沿岸警備・救難を主な任務とする中型巡視船ですが、大型巡視船の任務を一部代替できるよう設計されています。これは、緊急事態発生時に大型巡視船が他地域に派遣されている場合でも、迅速な対応を可能にするためです。

そのため、かとり型巡視船は全長72メートルと、従来の中型巡視船よりも大型化され、耐航性能や曳航能力は大型巡視船に匹敵します。また、25ノット以上の高速性を確保するため、煙突を廃したシンプルな船体形状と半滑走型船型が採用されています。

強行接舷時の安全性を考慮し、船首部には脱着式の防舷物を取り付ける設計となっています。操舵室は船体中央に配置され、波浪の影響を軽減する設計です。さらに、乗組員の居住性向上のため、女性乗組員への配慮も設計に盛り込まれています。

装備

かとり型巡視船は、20mm多銃身機銃、遠隔操作型の放水砲といった主要な武装を備えています。また、高速警備救難艇や複合艇を搭載し、災害対応のためのデッキスペースも確保されています。一部の船には、災害対応能力強化のため、追加の複合艇を搭載できるよう設計されています。

運用と改良

かとり型巡視船は、短期間に複数隻が建造されましたが、運用実績に基づく継続的な改良が施されています。例えば、初期建造船に設置されていたアンカーレセスは、波浪の影響を受けやすいため、後続の建造船からは廃止されました。

まとめ

かとり型巡視船は、日本の沿岸警備の重要な役割を担う中型巡視船です。高い性能と柔軟な運用性、そして継続的な改良により、日本の海洋安全保障に貢献しています。今後とも、日本の領海警備において重要な役割を果たしていくものと期待されます。

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