きさげ加工

きさげ加工とは

きさげ加工は、金属加工における仕上げ工程の一つであり、特に精密機械の摺動面（滑り面）の性能を左右する重要な技術です。この加工は、工作機械のベッドや精密測定器など、高度な平坦度が要求される箇所に適用されます。主な目的は、金属表面の摩擦抵抗を低減させ、滑らかな動きを実現することです。

リンギング現象と仕上げの重要性

精密測定に使われるブロックゲージのように、極めて平滑な面同士を密着させると、「リンギング」という現象が発生します。これは、面同士が分子レベルで吸着し、容易に分離できなくなる状態です。同様の現象が機械の可動部で発生すると、動作不良や性能低下を引き起こすため、対策が不可欠となります。

鏡面加工のような高度な研磨技術を使えば、表面の粗さを減らし平坦度を高めることは可能です。しかし、可動部を持つ機械部品においては、平坦度が高すぎると、潤滑油が入り込む隙間がなくなり、リンギングや焼き付きが発生するリスクがあります。そこで、きさげ加工によって微細な油溜まりを作り、潤滑油の供給を確保するのです。

きさげ加工の具体的な手法

きさげ加工では、「きさげ」と呼ばれる特殊な工具を使用します。これは、刃先が鈍角になった鑿（のみ）のような形状をしており、熟練した作業者が手作業で金属表面を少しずつ削り、微小な窪みを形成します。この窪みは、滑らかな動きを妨げない範囲で、潤滑油を保持し、摩擦を減らす役割を果たします。

きさげ加工と似た目的で、ショットブラストという加工も用いられることがあります。また、最初から微小な窪みを設ける方法も採用されます。しかし、きさげ加工は、その精密さと手作業による調整が可能な点が特徴です。

きさげ加工が使用される対象

きさげ加工は、以下のような精密部品や装置に不可欠な技術です。

滑り面（機械摺動面）
超精密工作機械
超精密測定器
超精密平滑面
* 定盤

これらの部品や装置は、非常に高い精度と信頼性が求められるため、きさげ加工による丁寧な仕上げが欠かせません。

まとめ

きさげ加工は、単に金属表面を滑らかにするだけでなく、機械部品の性能と寿命を大きく左右する重要な技術です。精密な手作業によって、微小な窪みを形成し、潤滑油の供給を助け、摩擦を低減します。この高度な技術は、長年の経験と熟練した技術を持つ職人によって支えられています。

精密機械の分野において、きさげ加工は不可欠な存在であり、その技術は今後も継承されていくべき重要な財産と言えるでしょう。

もう一度検索