きっと ここが帰る場所

『きっと ここが帰る場所』（原題：This Must Be the Place）は、2011年に公開されたイタリア、フランス、アイルランド合作のコメディ映画です。監督は、『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』で第61回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞したパオロ・ソレンティーノ。主演は、同映画祭審査委員長を務めた俳優ショーン・ペンが務めています。この作品は、ソレンティーノ監督とショーン・ペンがカンヌ国際映画祭で意気投合し、制作された異色のロードムービーであり、原題はトーキング・ヘッズの楽曲「This Must Be the Place」から取られています。映画内では、デヴィッド・バーン本人が同曲を演奏するシーンも登場します。

映画は、かつての人気ロックスター、シャイアンの物語です。シャイアンは、妻とアイルランドのダブリンにある豪邸で、華やかなメイクとファッションを身につけながら、半隠遁生活を送っています。彼の周囲には、近所のロック少女メアリーなどごくわずかな人間関係しかありません。そんなある日、30年以上会っていないアメリカにいる父親が危篤との連絡を受けます。飛行機が苦手なシャイアンは船でアメリカに向かいますが、残念ながら父親の臨終には間に合いませんでした。

葬儀の後、シャイアンは衝撃的な事実を知ります。それは、ホロコーストを生き延びた父親が、長年、自分を辱めたナチスのSS隊員アロイス・ランゲを探し続けていたということです。父親の遺志を継ぎ、シャイアンはランゲを探す旅に出ます。旅の過程で、ランゲの妻や孫娘、息子といった人物に会い、目的を隠しながら情報を探ります。しかし、ついに見つけたランゲの隠れ家は空っぽでした。

そこに、ナチスの残党狩りのプロであるミドラーが現れます。実はシャイアンがミドラーに渡した資料に基づき、ランゲの居場所を既に突き止めていたのです。ミドラーに連れられてランゲの隠れ家にたどり着いたシャイアンは、ランゲから父親がどのような辱めを受けたのかを聞かされます。それは、ランゲが犬をけしかけて父親を脅かし、おびえて小便を漏らした父親を嘲笑ったという、些細なものだったのです。

シャイアンは、父親の「復讐」として、ランゲを全裸にして雪景色の中に置き去りにします。しかし、これは単なる復讐劇ではありません。この旅を通して、シャイアンは父親へのわだかまりを解き放ち、自分自身を受け入れることができるようになります。旅を終え、ダブリンに戻ってきたシャイアンは、派手なメイクとファッションを捨て、ありのままの自分で新たな人生を歩み始めるのです。

本作は、ショーン・ペンをはじめ、フランシス・マクドーマンド、ジャド・ハーシュ、イヴ・ヒューソンなど実力派俳優が脇を固めています。また、デヴィッド・バーンが本人役で出演するなど、豪華なキャスティングも魅力の一つです。

批評家の評価も高く、Rotten Tomatoesでは87件のレビューのうち67%が高評価、Metacriticでは29件のレビューの平均点が61点と、いずれも高い評価を得ています。カンヌ国際映画祭にも出品され、エキュメニカル審査員賞を受賞しています。独特のユーモアと、ショーン・ペンの繊細な演技、そして美しい映像が織りなす、忘れられないロードムービーとなっています。

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