きりしま事件

きりしま事件について

1943年6月3日、鹿児島において発生した「きりしま事件」は、日本の戦時中の言論弾圧を象徴する重要な出来事の一つです。この事件では、鹿児島日報の記者2名と販売局員1名を含む、合計37名が鹿児島県警察部特高課によって治安維持法違反と不敬罪で検挙されました。事件の中心にあったのは、俳句同人誌『きりしま』であり、検挙されたメンバーは同編集に関与していたことから、彼らの表現活動が問題視されたのです。

事件の背景

当時の鹿児島県警察部特高課長であった奥野誠亮は、同人誌に掲載されたある俳句を問題視しました。具体的には、食糧不足から馬肉を食べる心情を詠んだ句が「厭戦的」とされ、南国の花の赤色を賛美した句が「共産主義の肯定」とされたことが、彼らを検挙へと導く一因となりました。特高課は、これらの句から作者たちが共産主義者であると結論づけ、強制的な措置を講じたのです。

このような背景の中、捜査の結果として記者の瀬戸口武則と大坪白夢（実夫）は起訴猶予となったものの、販売局員であった面高散生は懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受けることになりました。これにより、戦時中の思想や表現の自由がいかに厳しく制限されていたかが示されています。

言論弾圧の広がり

この事件が発生した時期、特高警察は治安維持法に基づいて思想を厳しく監視し、文壇に対する言論も抑圧していました。不当な検挙はこの事件だけにとどまらず、他の俳句同人に対しても同様の措置が取られていました。秋の季語「菊枯れる」が「皇室の衰退」とする解釈が示されるなど、特高課は独自の解釈で句を攻撃し、言論封殺を行っていたのです。

このような言論弾圧は、国民の自由を大きく制約し、創作活動に影響を及ぼしました。俳句同人や文学者たちは、表現の自由を守るために闘っていましたが、政府の圧力に屈せざるを得ない状況が続いていました。

まとめ

「きりしま事件」は、戦前・戦中期の日本における言論弾圧の一例であり、表現の自由が脅かされた歴史を忘れてはならない重要な教訓を提供しています。事件を通じて、我々は自由な社会の重要性や、権力による制限への警戒心を改めて認識する必要があります。今後もこのような歴史を振り返り、自由な表現が保障される社会の実現に向けて努力し続けることが求められています。

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