けっこうな忠告

フランシスコ・デ・ゴヤの『けっこうな忠告』

フランシスコ・デ・ゴヤによる銅版画『けっこうな忠告』は、1797年から1799年に制作された作品で、80点からなる版画集『ロス・カプリーチョス』の15番目として位置づけられています。この版画は、売春に関わる若い女性を描いた作品であり、他者の助言によって売春に身を投じてしまう悲劇的な状況を風刺しています。現在、この作品はマドリードのプラド美術館に所蔵されています。

作品の内容

『けっこうな忠告』に描かれているのは、若い売春婦とその隣に座る遣り手婆の姿です。売春婦は頭にマンティーリャを被り、右手に半開きの扇子を持っており、いかにも待っている様子が伺えます。遣り手婆は、若い女性に何やら助言を与えているようで、彼女たちが客と待ち合わせをしていることを示唆しています。周囲には他の人物の影も描かれており、彼女たちに近づこうとする訪問者がいることを暗示しています。この作品では、ゴヤが周囲の人々の影響によって売春に志向する女性たちに対する批判が含まれています。

ゴヤの時代、マドリードでは売春が社会問題となり、アメリカ大陸からの梅毒の流行によって、売春宿が閉鎖される事態が発生しました。その結果、女性たちは路上での行商を強いられ、無管理状態で商売を営むことになりました。このような状況は、啓蒙主義者たちにとって重要な議題となりました。

批評と解釈

『けっこうな忠告』に関する手稿では、売春婦についての様々な解釈がなされています。ロペス・デ・アラヤの記述では、「彼女を連れ去る者は惨めだ」とし、プラド美術館の手稿では、忠告を守った結果が悲惨なものであることが示唆されています。また、スペイン国立図書館の手稿では、若い女性の隣にいる老女は母親で、娘を売春の世界に引き込むポン引きであると描写されています。

この作品は、ゴヤが先行する作品や他のアーティストの影響を受けていることも考えられます。例えば、ウィリアム・ホガースの『娼婦一代記』に見られるように、若い田舎娘が老女に迎え入れられる場面が共通しています。老女は若い女性に売春を勧める役割を果たしていると考えられ、ゴヤもこのような視点を作品に取り込んでいる可能性があります。

来歴

『けっこうな忠告』の準備素描は、ゴヤの死後、息子フランシスコ・ハビエル・ゴヤ・イ・バイユー、孫のマリアーノ・デ・ゴヤに相続されました。その後、バレンティン・カルデレラに渡り、1886年にプラド美術館がこの作品を購入しました。これにより、作品は現在も多くの人々に鑑賞され続けています。

ギャラリーと他の作品

『けっこうな忠告』を含むゴヤの作品は、売春をテーマとした他の多くの作品とともに、視覚的・社会的な議論を展開しています。これらの作品は、当時の社会の現実や女性の運命についての再考を促し、今日でも重要なメッセージを持ち続けています。

プラド美術館公式サイトには、ゴヤの『けっこうな忠告』についての詳細な情報があります。

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