けんびきょう座ガンマ星

けんびきょう座γ星

けんびきょう座γ星（ガンマ星、γ Microscopii / γ Mic）は、南天に位置するけんびきょう座の中で、最も明るい光を放つ恒星として知られています。

物理的特徴

この星は分類上、黄色巨星に位置づけられます。これは、主系列段階を終えて膨張し、表面温度が比較的低い段階にあることを示しています。さらに詳細な進化段階としては、「レッドクランプ」の状態にあると考えられています。レッドクランプとは、恒星の中心部でヘリウムの核融合（ヘリウム燃焼）が開始された後の、比較的安定した段階を指します。

運動と過去の接近

けんびきょう座γ星は、天文学者の間で「おおぐま座運動星団」のメンバーである可能性が指摘されています。おおぐま座運動星団とは、同じ起源を持ち、宇宙空間を同じ方向に運動している恒星の集まりです。この星団に属しているとすれば、γ星もまた特定の空間速度を持っていることになります。

興味深いことに、γ星はおよそ380万年前に太陽系に対して非常に接近した時期があったと推測されています。この最も接近した時点では、太陽からわずか約6光年の距離にあったと計算されています。この近さによって、その頃のγ星の視等級はマイナス3等に達していたと推定されています。これは、現代の夜空で最も明るく見えるシリウス（現在の視等級は約-1.46等）をも上回る明るさであり、もし当時の人類が夜空を眺めていたならば、ひときわ目立つ輝きを目にしたはずです。

名称の由来

けんびきょう座自体は、比較的新しい星座として分類されます。この星座は、18世紀中頃にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカイユによって、いて座とみなみのうお座の間に設定されました。星座が新しく作られた経緯から、このγ星には、本来属しているけんびきょう座でのバイエル符号（γ Microscopii）とは別に、かつてみなみのうお座の一部と見なされていた時期に基づいた、ジョン・フラムスティードによる番号、「みなみのうお座1番星」という古い名称も併せて与えられています。

見かけの伴星

けんびきょう座γ星は、観測によって一つの恒星に見えますが、その近くに別の星が存在することが知られています。γ星から視線方向に対して約26秒角離れた位置に、13.7等級の非常に淡い星（CCDM J21013-3215B）が観測されています。この星はγ星の「見かけの伴星」と呼ばれています。しかし、両者の間には物理的な重力の結びつきはないと考えられています。つまり、これらは互いの周りを公転する連星系を形成しているわけではなく、たまたま地球から見て同じ方向に見えているだけであると判断されています。

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