けんびきょう座

けんびきょう座（顕微鏡座）

けんびきょう座は、現代の88星座の一つとして知られ、18世紀半ばにフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって考案されました。この星座は、顕微鏡をテーマにしており、1756年に出版された彼の『Histoire de l'Académie royale des sciences』において、フランス語名「le Microscope」として初めて姿を見せました。1763年にラカーユが発表した著作『Coelum australe stelliferum』では、ラテン語の「Microscopium」に改名されました。

主な天体

現時点で国際天文学連合（IAU）に認定された固有名を持つ恒星は存在しませんが、いくつかの明るい星や天体があります。

• - α星: 見かけの明るさは4.890等で、5等星に分類されます。
• - γ星: けんびきょう座で最も明るい星で、見かけの明るさは4.654等です。フラムスティード番号では「みなみのうお座1番星 (1 PsA)」と称されています。
• - ε星: γ星と同じくらいの明るさを持ち、見かけの明るさは4.708等です。
• - AU星: りゅう座BY型変光星で、周囲にはデブリ円盤や太陽系外惑星が見つかっています。
• - AX星: 約13光年離れた赤色矮星で、閃光星の一種です。

また、けんびきょう座には以下の銀河も含まれます。

• - NGC 6923: 渦巻銀河。
• - NGC 6925: こちらも渦巻銀河です。

由来と歴史

けんびきょう座は19世紀以降の星座の中で新しい部類に入ります。18世紀中盤の星座の再編成の一環として生まれ、初めはフランス語の名称でしたが、ラテン語に変更された経緯があります。みなみのうお座との関係もあり、同じ区域に位置する星々がけんびきょう座として登録されました。

1922年にローマで行われた国際天文学連合の設立総会で、現在の星座の数が88に確定し、けんびきょう座もその一部として公式に認識されました。その際、星座名は「Microscopium」とし、略称は「Mic」とされました。新しい星座であるため、これにまつわる神話や伝承は存在しませんが、ヨハン・ボーデの提案により、もともとは「軽気球座」ともされる歴史もありました。

中国でのけんびきょう座

けんびきょう座の星々は、中国の二十八宿の北方玄武七宿の「牛宿」に関連付けられています。この星座に属する星たちは、古代中国の天文学でも重要な役割を果たしていました。

呼称と方言

日本においては明治時代から「顕微鏡」という訳名が広く用いられています。特に1952年に日本天文学会が方針を示した後、「けんびきょう」という名称が正式に認められ、現在に至っています。一方で、1931年に発行された『天文年鑑』では「むしめがね（顕微鏡）」という呼称も使われたことがありますが、正式な名称は「けんびきょう」として定着しました。これにより、日本における星座の名は一貫性を持つようになりました。

けんびきょう座は目立たない存在ですが、その背景や歴史は星座に興味を持つ人々に魅力を与え続けています。

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