こぐま座ガンマ星

こぐま座γ星（フェルカド）について

位置と明るさ

こぐま座γ星（こぐまざガンマせい）は、北天の星座であるこぐま座に位置する恒星の一つです。地球から見た視等級はおよそ3等級であり、これは肉眼でも比較的容易に見つけることができる明るさです。天文学の分野では、正式な学名としてγ Ursae Minoris、あるいはこれを略記したγ UMiが用いられています。

こぐま座は、現在の北極星であるポラリス（こぐま座α星）を含む星座として広く知られています。その星の並びは、しばしば「小さな柄杓（ひしゃく）」の形に例えられます。こぐま座γ星は、この「柄杓」を形作る星の一つであり、特に柄杓の「皿」にあたる部分に位置しています。この皿の部分は、γ星と、同じく明るい星であるこぐま座β星（コカブ）の二つの星によって形作られています。

固有名「フェルカド」の由来

こぐま座γ星は、「フェルカド（Pherkad）」という伝統的な固有名でも呼ばれています。この名前の起源は非常に古く、アラビア語の「al-farqadān」という言葉に遡ります。このアラビア語の語は、「二匹の幼獣」あるいは「二頭の仔牛」といった意味合いを持っています。ここで指されている「二匹」とは、こぐま座γ星とこぐま座β星の二つの星であると考えられています。

なぜこの二つの星が「幼獣」や「仔牛」に例えられたのでしょうか。それは、これらの星が天の北極、すなわち現在の北極星ポラリスの非常に近くに位置し、夜空においてあたかもポラリスを中心として周回しているかのように見えることに由来します。古来、このγ星とβ星は、北極の目印であるポラリスを守護する存在と見なされており、そのため「北極の守護者（Guardians of the Pole）」という別名でも親しまれてきました。「フェルカド」という名前も、このような古くからの観測に基づく呼び名の一つとして、長い歴史を持っています。

国際承認

伝統的に使われてきた固有名「フェルカド」ですが、国際的に正式な固有名として認められたのは比較的近年の出来事です。2016年8月21日、国際天文学連合（IAU）の下にある恒星の命名に関するワーキンググループ（Working Group on Star Names, WGSN）によって、このフェルカドがこぐま座γ星の正式な固有名として決定され、承認されました。

変光星としての性質

さらに、こぐま座γ星は、その明るさが一定ではない「変光星」としても知られています。具体的には、「たて座δ型変光星」という種類の変光星に分類されています。この種類の変光星は、星自体の脈動（膨張や収縮といった物理的な変化）によって、明るさが周期的に変動する特徴を持ちます。

こぐま座γ星における明るさの変化は、変動幅こそ小さいものの、およそ3.43時間という比較的短い周期で繰り返されています。観測によると、その明るさは約0.05等級の範囲で変動していることが確認されています。このような微細かつ規則的な明るさの変動は、星の内部構造や進化段階に関する貴重な情報を提供してくれるものであり、天文学的な研究対象となっています。

このように、こぐま座γ星「フェルカド」は、こぐま座の中で「小さな柄杓」の一部を構成する星であり、歴史的な固有名とその由来、そして変光星としての興味深さといった多様な側面を持つ恒星です。北極星の近くに位置するため、北半球からはほぼ一年中観測が可能であり、夜空を眺める際にその存在を確認することができます。

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