この子の七つのお祝いに

小説・映画『この子の七つのお祝いに』

『この子の七つのお祝いに』は、日本の作家斎藤澪によって書かれた小説で、その独自なストーリー展開により第一回横溝正史ミステリ大賞を受賞しました。1981年に角川書店から出版され、同年に単行本から文庫版まで様々な形式でリリースされています。この作品は、家庭内の複雑な関係と、悲劇的な運命を描いた内容で、後に映画化もされました。

あらすじ

物語は、昭和25年ごろの東京都大森から始まります。主人公の真弓は、幼い娘・麻矢と二人三脚で生活していますが、彼女は精神的な苦痛と共に育つことになります。真弓は麻矢に対し、「お父さんは私たちを捨てた悪い人」と繰り返し教え込み、強い恨みを抱かせました。このように育てられた麻矢は、7歳の正月に真弓が自ら命を絶つまで、初期の人生で多くのトラウマを抱えることになります。

時が流れ、昭和57年、東京で凄惨な殺人事件が発生します。被害者は池畑良子という女性で、残忍な殺され方をした彼女の周囲には多くの謎が渦巻いていました。初めは捜査当局が男の犯行だと思っていましたが、現場に残されたケーキを手掛かりに、事件の背後にいるのが女性であることが判明します。

この事件を追うフリーライター・母田耕一は、殺された池畑から得られる情報を元に取材を進めます。彼は、池畑が連絡を取ろうとしていた政治家の秘書・秦一毅と、その愛人であり占い師の青蛾との関係に迫ります。しかし、母田自身も情報収集の途中で命を落とすことになり、その死が他殺であることを察知した後輩記者・須藤洋史は、事件の真相を追究することを決意します。

恨みの連鎖

一方、成長した麻矢は、自らの父を探し出す旅に出ます。彼女は、ホテル王・高橋佳哉が自分の実父であることを知ります。須藤と共に過去の真実に辿り着いた麻矢は、最終的に父・高橋を自らの復讐の場へと誘います。すでに高橋は真弓の精神的な不安定によって、「教え込まれた憎しみ」という呪縛から解放されていないのですが、彼女の精神が崩壊してしまうことになります。

物語は、愛と復讐が交錯する中で展開され、麻矢の真のアイデンティティの発見が、彼女に大きな衝撃を与えます。麻矢が実の娘として育てられた背景を知った須藤は、彼女が何を背負って生きてきたのかを理解します。しかし、真相に近づくにつれ、彼女自身の精神も揺れ動いてしまいます。

キャスト

映画版では、岩下志麻が麻矢役を演じ、その他のキャストには根津甚八（須藤洋史）や杉浦直樹（母田耕一）、岸田今日子（真弓）などが名を連ねています。これらのキャラクターたちは、絡み合った人間関係と、それぞれの宿命に翻弄されながらも物語を進める重要な役割を果たします。

まとめ

『この子の七つのお祝いに』は、家族愛、憎しみ、復讐というテーマが緻密に描かれた作品です。斎藤澪の巧妙なプロットと深いキャラクター描写によって、ただのミステリーにとどまらない感情的な深みを持つ作品として多くの読者に評価されました。日本のミステリー作品の中で、特に思考を刺激する内容として多くの人々に愛され続けています。

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