ごはん (映画)

映画『ごはん』

概要

本作は、日本の米作りが直面する現代的な課題、すなわち農家の高齢化や後継者不足、さらには高コストの機械化による収益性の低迷といった厳しい現状を背景に描かれるヒューマンドラマです。監督は実家が稲作を営む安田淳一。自身の経験から、「もし父に何かあったら実家の田んぼはどうなるのか」という思いが本作の着想源となりました。

物語の主人公は、東京で働く若い女性、寺田ヒカリ。父の急逝により京都府の実家へ戻った彼女は、父が近隣約30軒分の水田の管理を請け負っていたことを知ります。さらに、農作業を支えていた人物が負傷し、他の農家も自力での管理が難しい状況に直面し、ヒカリは大きな困難に立ち向かうことになります。

慣れない農作業に奮闘するヒカリの姿を通して、観る者は普段何気なく食べているお米が、どれほどの知恵と労力によって生み出されているのかを知らされます。制作は未来映画社が約4年をかけて担当。安田監督は美しい水田の風景を捉えることにこだわり、納得のいく映像が撮れるまで次の稲作シーズンを待って撮り直すといった徹底ぶりでした。その映像美と、健気に努力する主人公の姿は、スタジオジブリ作品のヒロインを想起させるといった高評価も得ています。

本作の完成にはクラウドファンディングも活用されました。2017年1月19日の東京での先行上映では、400人以上の来場者が集まり、その感動的なストーリーと美しい映像が高い評価を受けました。低予算ながら、公開後は東京、大阪、京都、横浜、福岡など全国主要都市での順次上映が実現しました。映倫区分はGです。

あらすじ

東京で働く寺田ヒカリは、京都府の実家で農家を営む父の突然の訃報を受け帰郷します。父の葬儀を終え東京へ戻ろうとした矢先、父が地域の農家約30軒分の米作りを引き受けていた事実を告げられます。さらに、父の農作業を手伝っていた源八（ゲンちゃん）が骨折で動けなくなり、他の農家からも自分たちでは水田の世話ができないと言われ、ヒカリは窮地に立たされます。

途方に暮れるヒカリに、トマト作りが得意な老農夫・西山は問いかけます。「お父さんがなぜあれほど一生懸命、米作りをしていたのか、知りたくないか」。この言葉に心を動かされたヒカリは、源八の怪我が治るまでの間、父が守ってきた水田を自分が引き継ぐことを決意します。

しかし、これまで農作業とは無縁だったヒカリにとって、田んぼの管理は困難の連続。失敗を繰り返す中で、彼女は幼い頃のある出来事を思い出します。それは、母が病院で亡くなった時、父が水田を見に行ってしまい、自分一人で母の最期に立ち会ったこと。父の気持ちが理解できないまま抱えてきたわだかまりが蘇ります。それでも、田んぼと向き合い、土に触れる中で、ヒカリは父の生きた証、そして米作りに込められた人々の思いに触れていきます。

キャスト

寺田ヒカリ - 沙倉ゆうの
源八（ゲンちゃん） - 源八（げんや）
ヒカリの父 - 井上肇
ヒカリの叔母 敏子 - 紅壱子
コンバイン営業員 - 小野孝弘
西山老人 - 福本清三
コンバインを貸す農家 - 浅野博之
ヒカリの母 - 森田亜紀
他

スタッフ

監督・脚本・撮影・照明・編集 - 安田淳一
制作プロダクション・配給・宣伝 - 未来映画社
他

ロケ地

* 京都府宇治市、城陽市、久世郡久御山町、京都市伏見区

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