さくらの唄 (美空ひばりの曲)

さくらの唄

「さくらの唄」は、1976年7月1日に美空ひばりによって発表された楽曲です。作詞はなかにし礼、作曲は三木たかしが手掛けました。

楽曲の背景

作詞を担当したなかにし礼は、1970年代に入り、実兄の抱えた多額の借金を背負い、絶望の淵にいました。この曲は、そのような状況下で、自身の魂をあの世に送り出す遺言のような気持ちで書かれたと言われています。一方、作曲の三木たかしは、自ら作曲したこの曲に強い思い入れを持っていました。三木自身が歌唱したバージョンも録音しレコードを発売しましたが、全く売れませんでした。

しかし、この楽曲は偶然にも当時TBSの演出家であった久世光彦の耳に留まります。久世はこの曲に魅了され、同名のドラマの主題歌として美空ひばりにカバーを依頼することを決意しました。久世の熱意によって美空ひばりによるレコード発売が実現しましたが、周囲の期待とは裏腹に、この楽曲は当初ヒットには至りませんでした。

2016年、この楽曲の未発表音源が発見され、美空ひばりの誕生日である5月29日に、なかにし礼と三木たかしの楽曲「われとわが身を眠らす子守唄」とのカップリングでシングルとしてリリースされました。この未発表音源は、シングル制作のためにマスターテープを確認した際に見つかったもので、美空ひばりがギター伴奏のみで歌唱する別バージョンでした。

なかにし礼は、この楽曲について「借金返済に疲れ果てた時に書いた、死を恐れつつも憧れた歌。非常に暗い歌だが、シングルとして発売されるのは嬉しい。ひばりのレコーディングに立ち会った際、ひばりは本当に素晴らしかった。三木は泣きながら歌っていたが、ひばりは笑顔で歌っていた。その慈愛に満ちた笑顔が、より曲のメッセージを伝えていた」とコメントしています。

逸話

当時、人気ドラマを数多く手掛けていた久世光彦は、美空ひばりにこの曲を歌わせるため、山田太一の脚本で同名のドラマを企画しました。久世は美空ひばりの所属するコロムビアに直接交渉に行きましたが、カバー曲をシングルカットすることは前例がなく、またヒットしていない曲のカバーということで、一度は断られてしまいます。

しかし、久世は諦めず、当時名古屋で長期公演中だった美空ひばり本人を訪ねました。終演後の楽屋で三木たかしが歌う「さくらの唄」を流したところ、美空ひばりは再度聴きたいと要望しました。その際、久世は三木の歌唱について「少し泣きすぎだ。もっと微笑みながら人に語りかけるように歌えば良いのに」と感じました。すると、その直後、久世が思い描いた歌い方で歌が聞こえてきました。目をやると、美空ひばりが目を閉じながら歌っていたのです。

久世はその時の様子をこう語っています。「だるそうに楽屋の柱に寄りかかり、疲れた横顔に、疲れた笑いを浮かべて、歌っていた。美空ひばりはポロポロと涙をこぼして歌っていた。そしてテープが終わると、私に向かって座り直して、『歌わせていただきます』と嗄（しゃが）れた声で言って、天女のようにきれいに微(わ)笑(ら)った。」

収録曲

全楽曲とも、作詞：なかにし礼、作曲：三木たかし

オリジナル盤
1. さくらの唄
編曲：三木たかし
2. おんな酒
編曲：佐々永治

2016年EP盤
1. さくらの唄 (ギター・バージョン)
2. われとわが身を眠らす子守唄
編曲：若草恵
3. さくらの唄 (オリジナル・バージョン)
4. さくらの唄 (ギター・バージョン) オリジナル・カラオケ
5. われとわが身を眠らす子守唄 オリジナル・カラオケ

関連項目

1976年の音楽

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