さくらももこのオールナイトニッポン

さくらももこのオールナイトニッポン：漫画家の深夜ラジオ

1991年10月から1992年10月まで、ニッポン放送で放送された『さくらももこのオールナイトニッポン』。人気漫画家・さくらももこさんがパーソナリティを務めたこの番組は、彼女独特のユーモラスな語り口と、選曲のセンスで多くのリスナーを魅了しました。深夜のラジオという枠組みの中で、さくらさんの飾らない人柄や、意外な一面が垣間見えたと多くのファンが語っています。

番組の概要と特徴

毎週月曜日の深夜1時～3時、生放送ではなく録音放送で届けられたこの番組。その理由は、さくらさん自身が「生放送は不安だった」と語っていることからも伺えます。自宅で収録が行われたこともあったようです。

番組には、さくらさんの担当編集者であり、『りぼん』の人気コーナー「みーやんのとんでもケチャップ」の“みーやん”としても知られていた宮永正隆さんが深く関わっていました。宮永さんは番組の聞き手役を務め、全ての選曲を担当。彼の存在は、番組の独特な雰囲気を形作る上で欠かせないものだったと言えるでしょう。

宮永さんの選曲は、一般的なラジオ番組ではあまり聴くことのできない、珍しい楽曲や、ビートルズの未発表曲なども含む貴重な選曲でリスナーを驚かせました。「みーやんのお耳拝借」というコーナーでは、こうした選曲のこだわりがさらに際立ち、リスナーの知的好奇心を刺激しました。

番組内では、さくらさん作詞、TARAKOさん他『ちびまる子ちゃん』のキャラクターたちが歌う「仲よしマーチ」がフィラー曲として使用されていました。この曲は、さくらさんが作詞、戸田誠司さんが作曲・編曲を手掛け、それ以前にリリースされたイメージアルバムにも収録されていました。

また、驚くべきことに、フリッパーズ・ギターの解散ニュースを日本最速で報じたのもこの番組でした。音楽雑誌からの連絡を受け、その日の放送でいち早くこのニュースを伝えたのです。

番組の裏側と関係者

2018年にさくらさんが亡くなった後、『長谷川幸洋のOK! Cozy up!』で、番組の音源の一部が放送されました。この放送は、多くのリスナーから反響を呼びました。

ニッポン放送の定例記者会見では、番組開始の経緯が明かされました。さくらさんはビートたけしさんの『オールナイトニッポン』の大ファンで、番組へのハガキを送っていたほどだったとのこと。たけしさんからの直筆の絵をプレゼントされたというエピソードも明かされています。

番組スタッフには、中山千彰さん（ディレクター）、小林順さん（アシスタントディレクター）、清水さん（ミキサー）、山越さん（構成）らが名を連ねています。小林さんは現在は株式会社ファイの副社長を務めています。

番組を記念して出版された『ももこのしゃべりことば』には、番組でのトークが収録されています。

1992年2月17日放送回には、TARAKOさんとイルカさんがゲスト出演。2人の声はさくらさんと似ていたため、リスナーやスタッフを混乱に陥れたという逸話も残されています。

さらに、さくらさんのアシスタントを務め、『ちびまる子ちゃん』の後任作家となった小萩ぼたんさんは、この番組への投稿がきっかけでさくらプロダクションに就職したと語っています。

番組の遺産とその後

『さくらももこのオールナイトニッポン』は、単なるラジオ番組以上の存在でした。さくらさんの飾らない人柄、独特の感性、そして才能が凝縮された、かけがえのない時間だったと言えるでしょう。2024年には追悼番組も放送され、その人気と影響力の大きさが改めて証明されました。番組から生まれたエピソードや関係者の証言は、さくらさんの魅力を伝える貴重な資料となっています。この番組は、さくらももこさんの足跡を辿る上で欠かせない、重要な一部を担っているのです。

番組の音源は現在入手困難ですが、その存在は、多くのリスナーの心に深く刻み込まれています。そして、この番組は、さくらももこさんの記憶とともに、これからも語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索