さようなら (2015年の映画)

さようなら：アンドロイドと人間の静かな物語

深田晃司監督による2015年公開映画『さようなら』は、平田オリザの同名戯曲を原作とした近未来を舞台にした作品です。放射能汚染により荒廃した日本を舞台に、アンドロイドと人間の女性が織りなす静かで切ない物語が描かれています。

物語の舞台

舞台となるのは、放射能汚染により人々が避難を余儀なくされた近未来の日本です。政府は「棄国」という政策を決定し、国民に優先順位をつけて国外への避難を進めています。主人公のターニャは、難民として日本に残された女性。今は亡き両親が残したアンドロイド、レオナと共に人里離れた家で静かに暮らしています。避難の希望はなく、ターニャはレオナと共に最期のときを待つことになります。

アンドロイドと人間の共演

本作の大きな特徴は、石黒浩氏開発のアンドロイド、ジェミノイドFがレオナ役として出演している点です。アンドロイドが人間の俳優と共演する初の映画として話題を呼びました。ブライアリー・ロング演じるターニャと、ジェミノイドF演じるレオナの演技は、生と死、人間と機械というテーマを深く考えさせるものとなっています。

死生観への問いかけ

深田監督は、原作の舞台作品に触発され、脚本を執筆したと言われています。監督は、死を意識しないアンドロイドと、死を目前にした人間の対話を通して、「死とは何か」という根源的な問いかけを提示しようと試みています。この問いかけは、観客に静かに、しかし深く迫りくるものとなっています。

作品への評価

本作は、2015年の東京国際映画祭でコンペティション部門に選出されました。しかし、批評家の評価は分かれています。『バラエティ』誌や『ハリウッド・リポーター』誌などでは、陰鬱で絶望的な作品であると評されました。一方で、日本の映画評論家からは、原発事故や人種問題といった社会問題を含みながらも、人間とアンドロイドの不思議な関係性に焦点を当てた作品として高く評価する声もあります。

静謐な世界観

『さようなら』は、派手なアクションやドラマチックな展開はありません。静謐な映像と、アンドロイドと人間の繊細な演技が、終末的な世界観を際立たせています。観客は、ターニャとレオナの静かな日々を通して、人間の存在や生と死について、深く考えさせられることになるでしょう。

キャスト

ブライアリー・ロング：ターニャ役
ジェミノイドF：レオナ役
新井浩文
村田牧子
村上虹郎
木引優子
ジェローム・キルシャー
イレーヌ・ジャコブ

『さようなら』は、近未来社会を描いた作品でありながら、普遍的なテーマを扱った、深田晃司監督の代表作の一つと言えるでしょう。美しい映像と、静かな演技、そして考えさせられるテーマが、多くの観客の心を掴む作品です。

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