さよならアメリカ さよならニッポン/無風状態

さよならアメリカ さよならニッポン / 無風状態 (はっぴいえんど)

はっぴいえんどの3作目のシングルとして1973年にリリースされた「さよならアメリカ さよならニッポン / 無風状態」は、彼らの音楽キャリアにおいて重要な意味を持つ作品です。アルバム『HAPPY END』からのカットであり、バンドの解散という時代の転換期の中で生まれた楽曲です。

さよならアメリカ さよならニッポン

この曲は、アメリカ音楽への憧憬と、同時に感じた幻滅という複雑な感情が込められています。レコーディング中にヴァン・ダイク・パークスが参加し、大胆なアレンジが施されたことで、ウェストコーストサウンドの影響を受けた独特の楽曲に仕上がりました。

ヴァン・ダイク・パークスとの出会い

大瀧詠一が曲を用意できていない状況で、ヴァン・ダイク・パークスがスタジオに現れ、共作することになったというエピソードは、この曲の成立において非常に重要な要素です。細野晴臣は、この時の体験を「レコーディングでの最大の収穫だった」と語り、パークスの音楽的なアプローチに大きな影響を受けたと述べています。パークスの参加によって、リズムや音の扱い方において、それまでの日本の音楽とは異なる次元が開かれたと細野は語っています。

歌詞に込められたメッセージ

松本隆が即興で書き上げたという歌詞には、アメリカへの幻滅と、同時に日本の音楽シーンにおける自己の立ち位置への葛藤が込められています。「君たちは日本から僕たちの仕事を取りに来るのか」という言葉に幻滅し、憧れていたアメリカへの気持ちがしぼんでいく様子を表現したと言います。また、細野は「僕たちのやってるのはアメリカでもないし、日本でもない」という感覚を語り、バンドが置かれていた複雑な状況を反映していると述べています。

無風状態

細野晴臣が作詞・作曲を手掛けた「無風状態」は、解散が決まっていたバンドの状況を反映した楽曲です。主人公が西へ向かって航海するという歌詞は、バンドのメンバーがそれぞれの道へ進むことを暗示しているかのようです。細野自身は、この曲を「状況論的な比喩」と表現し、バンドが「何をやっているのかわからなくなってきて、それで突然、船を降りちゃう」状況を歌ったと述べています。

大瀧詠一との関係

歌詞の一節「奴はエイハブ 気取って 海をひとかき」について、細野は自身をシニカルに見ていたと語っていますが、大瀧はこの歌詞を自身への批判だと感じ、傷ついていたというエピソードも残っています。このエピソードは、当時のバンドメンバー間の繊細な関係性を物語るものと言えるでしょう。

リリースとその後

「さよならアメリカ さよならニッポン / 無風状態」は、アナログ・シングルの復刻盤が何度かリリースされており、2021年には細野晴臣によるセルフカバーも発表されています。この曲は、はっぴいえんどの代表作の一つとして、現在も多くの音楽ファンに愛され続けています。

批評

田口史人は「当時の日本のロックを象徴するこのタイトルは、ロックの日本語/英語論争の正に渦中にあった彼らの最後として、これほどふさわしいものはない」と評しています。立川芳雄は「無風状態」を「“定住を拒む人間”としての細野晴臣のあり方を象徴するもの」と評しています。

「さよならアメリカ さよならニッポン / 無風状態」は、はっぴいえんどの音楽性だけでなく、時代の空気やバンドの inner world を感じ取ることができる、貴重な作品と言えるでしょう。

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