さよならドビュッシー

概要

『さよならドビュッシー』は、中山七里によって書かれた日本の推理小説で、同時に音楽をテーマにした成長物語でもあります。この作品は、ピアニストを目指す少女が苦難を乗り越えていく姿を描いており、第8回『このミステリーがすごい！』大賞を受賞した傑作として知られています。物語は、主人公である香月遥が、ピアニストへとの道を歩む中で直面する様々な試練と謎に迫るものです。

あらすじ

物語は、特待生として高校の音楽科に進むことが決まっている香月遥の人生が、ある悲劇的な火事によって大きく揺らぐところから始まります。スマトラ沖地震で両親を失った親友の片桐ルシアとともに、遥は日々ピアノの練習に励みながら、音楽の道を夢見ています。しかし、家族が火事で次々と命を落とし、全身に大火傷を負ってしまいます。なんとか命を取り留め、外見は元通りだが、心に深い傷を抱える遥。彼女は再び立ち上がり、名門高校に入学するものの、周囲からの偏見や厳しい期待が彼女に重くのしかかります。

そんな遥を助けるのが、鬼塚の弟弟子である新進気鋭のピアニスト、岬洋介です。彼は遥にレッスンを行い、アサヒナ・ピアノコンクールへの出場を目指します。二人三脚で厳しい練習を続ける中、不可解な事故や事件が次々と彼女たちの周囲に起こります。家族の遺産問題も絡み、命を狙う陰謀が展開されていく中、遥は自身の音楽を通じて周囲との関係を築き、夢を追うことの意義を見出していきます。

登場人物

• - 香月 遥（こうづき はるか）: 本作の主人公。特待生として音楽科への入学が決まっている16歳のピアニスト志望。事件を通じて成長していく。
• - 岬 洋介（みさき ようすけ）: 渋い魅力の新進気鋭のピアニストで、遥のレッスンを担当。過去に隠された秘密を持つ。
• - 片桐 ルシア: 遥の従姉妹。地震で両親を失った後、遥と共に香月家に身を寄せている。
• - 香月 玄太郎: 遥の祖父で、香月家の当主。物語の事故の原因となる火事の中心人物。
• - 鬼塚: 遥とルシアのピアノ教室の教師。厳しい指導で知られている。

作品の魅力

この小説は、音楽という美しいテーマを通じて、緊迫感のあるミステリー要素と、キャラクターの内面描写を兼ね備えています。音楽家としての情熱と直面する試練が絡み合い、読者は遥の成長とともに、彼女の痛みも共有することになります。

作品は映画やテレビドラマとしても映像化され、多くの人々に感動を与えました。特に、音楽と推理が見事に融合している点が高く評価されています。恋愛や友情の要素を絡めながらも、ミステリーとしての緊張感を失わずに展開されるストーリーが、興味を引き続けます。主人公の成長とともに響く音楽の力が、読者を物語の深いところへと誘います。

この作品を通じて、人間のもつ強さや夢への情熱、また音楽の持つ不思議な力を感じることができ、ぜひ多くの方に読んでほしい一冊です。

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