さらば冬のかもめ

さらば冬のかもめ (The Last Detail)

『さらば冬のかもめ』（1973年）は、ハル・アシュビー監督によるアメリカのコメディドラマ映画です。ジャック・ニコルソン、ランディ・クエイド、オーティス・ヤングらが出演し、ダリル・ポニクサンの同名小説を原作としています。

あらすじ

舞台は1970年代初頭のアメリカ。海軍下士官のバダスキー（ジャック・ニコルソン）とマルホール（オーティス・ヤング）は、若い新兵メドウズ（ランディ・クエイド）をポーツマス海軍刑務所へ護送する任務を命じられます。メドウズは、わずか40ドルを盗んだ罪で、8年という重い懲役を言い渡されたばかりでした。

当初は単なる任務として捉えていたバダスキーでしたが、メドウズの境遇に同情し始めます。彼はメドウズに、刑務所に入る前に人生を経験させようと、護送の道中で様々な場所に連れ出します。マルホールも最初は戸惑いながらも、次第に二人の行動に巻き込まれていきます。

3人は酒を飲み、喧嘩をし、宗教施設を訪れ、賭けダーツで金を稼ぎ、メドウズに娼婦を抱かせます。メドウズは戸惑いながらも、徐々に心を開き、自信をつけていきます。バダスキーから手旗信号を教わるまでになり、3人の間には奇妙な友情が芽生えていきます。

刑務所に到着する前日、3人は冬の公園でバーベキューをします。バダスキーはメドウズの将来を案じ、複雑な表情を浮かべます。メドウズは懸命に木の枝を折ろうとし、ついに成功させます。そして、何かを決意したように立ち上がり、手旗信号で別れを告げ、走り去ります。バダスキーはメドウズを捕まえようとしますが、メドウズは抵抗し、必死に逃れようとします。

結局、メドウズは刑務所に収容され、バダスキーとマルホールは任務を終えます。しかし、彼らの心には、メドウズとの出会いが深く刻まれていました。任務後、バダスキーとマルホールは再会を約束し、それぞれの道を歩み始めます。

キャスト

ビリー・バダスキー：ジャック・ニコルソン（石田弦太郎）
ミュール・マルホール：オーティス・ヤング（神谷和夫）
ラリー・メドウズ：ランディ・クエイド（安西正弘）
娼婦：キャロル・ケイン

製作

プロデューサーのジェラルド・エアーズは、ダリル・ポニクサンが執筆中だった小説『The Last Detail』の映画化権を獲得し、ロバート・タウンに脚本を依頼しました。当初、コロムビア映画は、作品中の過激な言葉遣いを懸念しましたが、最終的にジャック・ニコルソンの主演が決まり、製作が実現しました。

監督にはハル・アシュビーが起用されましたが、コロムビア社との関係は良好とは言えず、予算も削減されました。

キャスティングでは、メドウズ役にランディ・クエイドが選ばれました。アシュビーは、クエイドの風変わりな雰囲気に魅力を感じたと語っています。

撮影

撮影は、トロント海軍基地を主な撮影場所として行われました。撮影監督には、マイケル・チャップマンが起用され、ドキュメンタリー風の映像を作り上げました。アシュビーは、俳優たちの演技を尊重し、自由に演じさせることを心掛けました。

評価

『さらば冬のかもめ』は、公開後高い評価を受けました。1974年のカンヌ映画祭では、パルム・ドールにノミネートされ、ジャック・ニコルソンが男優賞を受賞しました。また、アカデミー賞では、主演男優賞（ニコルソン）、助演男優賞（クエイド）、脚色賞（タウン）にノミネートされました。

続編

2017年には、リチャード・リンクレイター監督による続編『Last Flag Flying』（邦題『30年後の同窓会』）が公開されました。ジャック・ニコルソンとランディ・クエイドの出演は実現しませんでしたが、前作から30年後を舞台に、3人の男たちの再会が描かれています。

『さらば冬のかもめ』は、アメリカン・ニューシネマの傑作として、今もなお多くの人々に愛されています。

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