アメリカン・ニューシネマ

アメリカン・ニューシネマとは

アメリカン・ニューシネマは、1967年から1970年代にかけてアメリカで制作された映画の流れを指し、日本独自の呼称です。この時期の作品群は、従来のハリウッド映画とは一線を画し、社会問題やテーマを大胆に扱ったことから「ニュー・ハリウッド」という名でも知られています。特に日本においては、この言葉が広まり、特定の作品や監督を連想させるようになりました。とはいえ、どの作品を含めるかについては意見が分かれるため、正確な定義づけは難しいとされます。

特徴と影響

「アメリカン・ニューシネマ」は、主人公としてアウトローやアンチ・ヒーローを据え、しばしば反体制的な内容が描かれます。映画評論家の川本三郎によれば、これらの作品は1950年代のアメリカ社会体制への反抗として生まれ、主に若者が主人公であり、従来のハリウッド映画では無視されがちだったテーマが肯定的に取り上げられました。田山力哉は暴力が重要なモチーフとなり、具体的には『ダーティ・ハリー』や『わらの犬』を例に挙げ、その傾向を論じています。また、今野雄二はこのニューシネマの根底にあるのは、友情や思いやりという幻想的な側面ではないかと指摘しました。

歴史的背景

アメリカのニューシネマは1967年に公開されたアーサー・ペン監督の『俺たちに明日はない』に始まり、大きな議論を呼びました。この映画は、暴力と犯罪を美化する描写があり、批判を受けたものの、映画批評家ポーリン・ケイルはこの作品を高く評価し、新たな試みと称賛しました。さらに、『卒業』や『イージー・ライダー』といった作品が続き、低予算で製作された『イージー・ライダー』は全国的なヒットとなり、アメリカン・ニューシネマの確立に寄与しました。

文化的な影響

1960年代は、ベトナム戦争や市民権運動が影響を与え、反体制的な風潮が高まる中でアメリカン・ニューシネマが発展しました。映画は、社会や政治への批判を反映し、観客に新たな視点を提供しました。作品の中には、ヒッピー文化や若者の反抗がテーマとして表現され、アンチ・ヒーローや悲劇的な結末が描かれることが一般的でした。多くの作品が体制の圧迫や不条理を映し出し、それが当時の社会状況を反映していました。

代表的な作品

アメリカン・ニューシネマの代表作としては、先述の『俺たちに明日はない』、『卒業』、そして『イージー・ライダー』が挙げられます。また、スティーヴン・スピルバーグやフランシス・フォード・コッポラなどの監督が新たな潮流を生み出し、アメリカ映画の進化に大いに寄与しました。しかし、この流れは1970年代後半にはほころびを見せ、明るい商業主義的な映画が台頭し、「ハリウッド・ルネサンス」という新たな潮流が生まれることとなりました。

終焉とその後

アメリカのニューシネマは、ベトナム戦争の終結とともに徐々に姿を消していき、1979年の『地獄の黙示録』がその最後の作品とされることもあります。その後、観客のニーズが変化し、商業主義的な作品が主流となり、かつての反体制的なメッセージを持つ作品は徐々に少なくなりました。

アメリカン・ニューシネマは、ただの映画の潮流にとどまらず、70年代のアメリカ社会における若者の反乱や希望を象徴するものでした。その影響は、今なお映画界に残り、新たな世代の映画作家にインスピレーションを与え続けています。

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