ざざむし

ざざむし（ざざ虫）について

ざざむし、またはザザムシとは、長野県伊那市の天竜川上流域に生息する水生昆虫の幼虫の総称で、主にカワゲラ、トビケラ、ヘビトンボなどが含まれます。これらの幼虫は清流で育ち、地域の独特な食文化を形成する食材として利用されています。調理方法としては、佃煮や揚げ物が一般的で、風味豊かな珍味として人気です。

起源と歴史

ざざむしの食習慣は、1920年代から1930年代にかけて定着したと考えられています。村上哲生らの研究によれば、この地域での食用昆虫についての言及は1919年には見られず、1934年の記録からその存在が確認されます。しかし、地元の食文化としては著しい存在となり、伊那地域の特産品として認識されています。

名称の由来

「ざざむし」という名前は、おそらく「ざーざー」とした水流の中に生息する虫や、浅瀬にいる虫に由来しています。また、福島県でもかつては類似の名称が使われており、食用とされていました。

構成と種類

ざざむしは、主にヒゲナガカワトビケラ、シマトビケラ、ヘビトンボ、カワゲラなどの幼虫から構成されます。天竜川周辺の環境変化により、ヒゲナガカワトビケラが最も多く捕獲される傾向にあります。調査によれば、ヒゲナガカワトビケラの幼虫が約72.85%を占め、そのほかにも様々な種類が捕獲されます。

また、地域ごとの水質や環境の違いが主に影響し、捕獲される昆虫の構成に変化があります。戦後の厳しい水質汚濁により、カワゲラが一時的に多く捕獲されたそうですが、現在では主にヒゲナガカワトビケラが優勢です。

捕獲方法

ざざむしの漁期は冬の12月から2月までの3ヵ月間で、この期間に行われる「ざざ虫踏み」という伝統的な方法で捕獲されます。漁業協同組合を通じて入漁料を支払うことで「虫踏み許可証」を取得し、特定の道具を使い川の中で捕獲を行います。通常、胴長を履き、足にかんじきを付けて川に入ります。

捕獲には四ツ手と呼ばれる漁具を使用し、特定の技術を駆使してざざむしを捕集します。選別作業により、食用としない小さい昆虫やごみは取り除かれます。

食文化としてのざざむし

ざざむしは高級な珍味として知られ、伊那市では名物の佃煮が有名です。揚げ物として楽しむことも一般的で、地域の土産物として販売されています。香ばしい風味と独特の味わいから、小エビに似た食感が好評です。

近年、食文化としては減少傾向にありますが、漁業の存続や加工食品の販売を通じて、長野県の食文化として根強く残っています。水温の上昇による環境変化が懸念される中でも、ざざむしから有毒物質が検出されないことから、食用としての安全性が保たれています。

結論

ざざむしは長野県伊那地域の渓流で育まれた独自の食文化を反映する重要な食材です。これからも地域の伝統的な食文化としての役割を果たし続けることでしょう。特産品として多くの人に楽しまれることを願っています。

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