しまざき由理

日本の歌謡界において、その伸びやかな歌声で多くの聴衆を魅了してきた歌手、しまざき由理（しまざき ゆり）は、1956年12月5日に愛知県名古屋市千種区で誕生しました。歌手活動初期には旧姓を用いた「嶋崎 由理」名義で、また時期によっては「島崎 由理」と表記されることもありました。

彼女が歌の世界へ足を踏み入れたのは、小学校6年生だった1968年のことです。フジテレビ系列で放送されていた視聴者参加型番組『日清ちびっこのどじまん』に出演し、見事グランドチャンピオンの栄冠を掴み取りました。この番組からは、後に広く知られる堀江美都子さんらを始めとする多くの実力派少女歌手が輩出されています。この頃、早くもキングレコードから『真夏の女の子』でレコードデビューを果たしています。

本格的なプロ歌手としての活動は、翌1969年から始まります。日本コロムビアと専属契約を結び、フジテレビで放送されたアニメ『紅三四郎』の2代目エンディングテーマ『夕陽の男』を山尾百合子さんと共に歌い、公式なデビューを飾りました。

彼女のキャリアにおいて特に印象深いエピソードとして語り継がれているのが、1970年に録音された国民的アニメ『みなしごハッチ』の主題歌に関する一件です。当時中学1年生だった嶋崎由理さんは、思春期特有の声変わりの時期にあたり、歌唱に不可欠な声の艶や高音域の伸びに苦労していました。作詞家の丘灯至夫氏やアニメ制作会社タツノコプロの吉田竜夫社長（当時）が見守る中、何度歌い直しても納得のいくテイクが録れず、追い詰められた彼女はついにスタジオのトイレに駆け込み、一人涙を流しました。しかし、気を取り直して再びマイクの前に立った時、不思議なことに声には以前のような艶が戻っており、その後の歌唱は見事に一発OKとなりました。この出来事がきっかけで、関係者の間では「泣いた後の方が良い歌が歌える」という逸話が生まれました。

学業との両立も行い、1975年3月には守山女子商業高校を卒業し、同年4月には東京女子体育大学へと進学しました。そして、大学生活を送る傍ら、歌手としてのキャリアは決定的な転機を迎えます。

1975年5月に放送が開始された人気刑事ドラマ『Gメン'75』。この番組の重厚な雰囲気を彩るエンディングテーマとして、彼女の歌う『面影』が起用されました。同年7月1日にシングルとして発売された『面影』は、その叙情的なメロディーとしまざき由理さんの情感豊かな歌唱が多くの人々の心を捉え、驚異的な140万枚を超える売上を記録する大ヒットとなりました。この楽曲は、彼女の代表曲としてだけでなく、日本のテレビドラマ史に残る名曲として今もなお親しまれています。この『面影』のヒット以降、彼女は芸名を「しまざき 由理」と改めました。

私生活では、1981年に満24歳で知人の紹介による見合い結婚を選んでいます。また、当時はテレビのバラエティ番組にも出演しており、特に『オールスター大運動会』などでは、浅野ゆう子さんやにしきのあきらさん、千昌夫さんといった当時の人気芸能人と並んで常連として活躍していましたが、1982年1月に放送された『新春オールスター大運動会』を最後に、メディアへの露出は徐々に減少していきました。

近年では、2009年2月に放送された子ども向け番組『はっけん たいけん だいすき! しまじろう』の挿入歌『アッパレ!いちばん』の歌唱を担当するなど、散発的な活動も見られます。また、同年のNHK BS2『BSアニメ主題歌大全集2009』や、日本テレビ『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』、テレビ東京『木曜8時のコンサート〜名曲!にっぽんの歌〜』（2012年）といったテレビ番組に出演し、久々にその歌声を披露しました。過去に発表した作品も再び注目され、2014年5月にはアルバム『アフターアワー』や『しまざき由理 Gメン'75を歌う』が再発売されています。

『ハクション大魔王の歌』、『みなしごハッチ』といったアニメソングから、『Gメン'75』の『面影』のような大ヒット曲まで、時代を彩る様々なジャンルの楽曲を歌い上げてきたしまざき由理さん。その表現力豊かな歌声は、今も多くのファンの心に残っています。

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