しもじ型巡視船

しもじ型巡視船：日本の沿岸警備を支える強固な盾

しもじ型巡視船は、海上保安庁が運用するPS型、180トン型の巡視船です。2012年の尖閣諸島国有化以降、中国公船の領海侵入や外国漁船の違法操業が増加したことを受け、それらに対応するため、警備強化の一環として建造されました。予算要求段階では「規制能力強化型巡視船」と呼ばれていました。

設計と性能：強化された防御力と航行性能

本型の基本設計はびざん型後期型をベースにしていますが、密漁船への強行接舷を想定し、船体の強度向上に重点が置かれています。そのため、船体素材はアルミニウム合金から高張力鋼に変更され、舷側には脱着式の防護プレートがほぼ全長にわたって装備されています。操舵室脇にも同様の防護プレートを設置可能で、船橋両舷の張り出し部下部には鋼材支柱が設置されているのが外見上の特徴です。

機関は、10番船「みかづき」を除き、ニイガタ16V20FXディーゼルエンジン2基を搭載。10番船のみMTU20V4000M93Lディーゼルエンジン2基を搭載しています。これは、びざん型巡視船に搭載されていた新潟・ピルスティク製のディーゼルエンジンよりも出力の大きなエンジンです。

配備と運用：宮古島への集中配備と小笠原諸島への初配備

しもじ型巡視船は、尖閣諸島周辺海域における外国船の不法操業取り締まりを主な任務としています。2016年度から2018年度にかけて、毎年3隻ずつ、計9隻が宮古島に集中配備されました。この配備計画に伴い、宮古島海上保安署は宮古島海上保安部に昇格し、伊良部島の長山港長山地区が新たな巡視船の泊地として整備されました。

2021年2月に竣工した10番船「みかづき」は、小笠原海上保安署に配備されました。小笠原海域では、アカサンゴ密漁や違法操業が問題となっており、それまで配備されていた監視取締艇「さざんくろす」では対応が困難でした。「みかづき」の配備により、小笠原海域の警備体制が大きく強化されました。

しもじ型巡視船の意義

しもじ型巡視船は、日本の領海警備の強化に大きく貢献しています。特に、尖閣諸島周辺海域や小笠原諸島海域において、中国公船や外国漁船による違法行為への対応能力を向上させ、日本の海洋権益を守る上で重要な役割を果たしています。その高い強度と防御力、そして最新の航行性能は、日本の沿岸警備の未来を担う重要な要素です。今後の運用状況にも注目が集まります。

参考文献

秋本, 茂雄「2008－2018年 進化の10年を振り返る (特集 海上保安庁 : 創設70周年)」『世界の艦船』第881号、海人社、2018年7月、130-135頁
海人社（編）「新型巡視船「しもじ」拝見！」『世界の艦船』第855号、海人社、2017年3月、64-65頁
海人社（編）「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向 : 平成28年度を顧みて」『世界の艦船』第861号、海人社、2017年3月、141-147頁
海人社（編）「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向 : 平成29年度を顧みて」『世界の艦船』第881号、海人社、2018年3月、195-201頁
海人社（編）「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向 : 平成30年度を顧みて」『世界の艦船』第903号、海人社、2019年3月、157-163頁
海人社（編）「海上保安庁船艇の全容」『世界の艦船』第933号、海人社、2020年10月、37-101頁
* 佐藤, 一也「4サイクルディーゼル機関の技術系統化調査」『国立科学博物館　技術の系統化調査報告　第12集』2008年3月。

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