しろくまベルスターズ♪

しろくまベルスターズ♪

『しろくまベルスターズ♪』は、ゲームブランドPULLTOP（現：株式会社ウィルプラス）より2009年12月11日に発売された18歳以上対象の恋愛アドベンチャーゲームです。人々へプレゼントを届けるサンタクロースが実在し、彼らを支えるトナカイと共に活躍するファンタジー世界を舞台に、物語は展開します。本作の根幹には「幸せの循環」というテーマが据えられており、プレゼントを通じて人々を幸せにするサンタと、その相棒であるトナカイたちが、互いの交流や成長を通して自らも幸せを見出していく過程がハートフルに描かれています。

物語と舞台

物語の主な舞台となるのは、観光と漁業が盛んな「しろくま町」。南に湾、北に山を望むこの町は、かつて外国人が多く移住した歴史を持ち、今もその面影を残しています。町には路面電車が走り、シンボルである逆立ちした白熊の像は、かつて町の動物園にいた「くまっく」という名の白熊がモデルとされています。クリスマスイブには「氷灯祭」が開かれ、町全体が幻想的な光に包まれます。

主人公・中井冬馬は、サンタのソリを牽引する特殊なマシン「セルヴィ」を操る若きトナカイです。新人サンタの星名ななみとペアを組み、初めてのクリスマスイブの任務でしろくま町を訪れます。しかし、予期せぬ事故によりセルヴィが破損。修理のために町での足止めを余儀なくされた冬馬は、その10ヶ月後、本部からの辞令でしろくま町支部に正式に配属されることになります。彼は、ななみ、そして月守りりか、柊ノ木硯といった個性豊かな新人サンタたちと共に、街外れの樅の森に佇む巨大なツリーハウスでの共同生活を始めることとなります。ツリーハウスの根元にあるログハウス部分は、町のサンタ支部が経営するおもちゃ屋「きのした玩具店」として使われており、冬馬は店長代理の役目も担うことに。次のクリスマスイブに向けて、サンタたちの訓練と、慣れない共同生活や店の運営に四苦八苦する冬馬のドタバタな日々が始まります。支部長の評価次第ではペアのシャッフルもあり得るという状況の中、冬馬とサンタたちは絆を深め、成長していきます。

システム

ゲームシステムはオーソドックスな恋愛アドベンチャー形式を採用しています。プレイヤーは主にマウスクリックでテキストを読み進め、途中で現れる選択肢を選ぶことで主人公・冬馬の行動を決定し、物語を分岐させていきます。攻略可能なヒロインは4人。物語は10月頃からクリスマスの期間にかけて描かれており、前作『遥かに仰ぎ、麗しの』と同様に話数制が導入されています。選んだ選択肢によって結末が変化する、マルチエンディング方式となっています。

独特の世界観と用語

本作の世界観は、クリスマスを支える独自の組織「ノエル」を中心に構築されています。

サンタ: クリスマスイブにトナカイと共に空を駆け、ルミナという光の粒子を操ってプレゼントを届けることを仕事としています。普段は人々と変わらない姿ですが、特別な能力を持ちます。しろくま町支部には、なぜか若くて可愛らしいサンタたちが集まっています。クリスマス以外の時期は、訓練や副業に励んでいます。
トナカイ: サンタとペアを組み、特殊なマシン「セルヴィ」を操縦してソリを牽引し、サンタを目的地まで運びます。大気中のルミナの流れを読んで飛行します。自由気ままなタイプが多いとされますが、組織の上司であるサンタの命令には従う必要があります。最高の技術を持つトナカイのチームは「八大トナカイ」と呼ばれ、冬馬の目標です。
キャロル: サンタやトナカイの補佐役を務めます。多くはサンタの見習いや経験者です。
ロードスター: ノエルの支部を統括するサンタです。サンタたちの指導や管理、ルミナの動向調査などを行います。しろくま町支部では英国紳士のサー・アルフレッド・キングが支部長を務めています。
セルヴィ: サンタのソリを牽引する飛行マシンです。大気中のルミナを取り込み、動力源として飛行します。冬馬の愛機「カペラ」は旧式ながらカスタムされ、ジェラルドの最新型「ベテルギウス」など様々な機種が存在します。
ツリー: 各地に存在し、ルミナの発生源となる存在です。セルヴィはツリーから発せられるルミナの流れに沿って飛行し、エネルギーを得ます。冬馬たちが住むツリーハウスも、不安定ながらルミナを発するツリーそのものです。
* ルミナ: ツリーから発生し大気中を流れる光の粒子。サンタやトナカイ（ゴーグル使用時）にのみ見え、サンタの力やセルヴィの動力源となります。クリスマスの時期に活動が活発化します。

ノエルは世界各地に支部を持ち、サンタやトナカイは異動することもあります。生活費が支給給料だけでは足りないため、多くのサンタやトナカイは副業を持っています。しろくま町支部では、おもちゃ屋「きのした玩具店」を経営しています。

制作背景と音楽

本作の企画は、PULLTOPの朝妻ユタカ氏を中心としたラインで2006年に始まりました。グラフィッカーの「サンタものはどうか」という発言がきっかけで、ブランドカラーである「楽しい雰囲気」「幸せな世界観」に合致するとして具体化が進行。「幸せをめぐる物語」をコンセプトに、「幸せの循環」というテーマが掲げられました。開発当初、シナリオ担当と原画担当の間でサンタのイメージに違いがあったものの、朝妻氏の折衷案により牧歌的な世界観へと方向性が定まりました。シナリオはメインのJ・さいろー氏に加え、複数のライターが担当しています。

音楽面では、飛行シーンを意識した楽曲が多く収録されています。オープニングテーマ「Winter Bells♪」は、作曲家のおおくまけんいち氏が「サンタさんたちの一方的な愉悦の歌」として手掛けた楽曲で、特徴的なコーラスが好評を博しました。また、グランドエンドではヒロインを演じた声優陣による合唱バージョンが流れるという、感動的な演出が盛り込まれています。クライマックスで流れる挿入歌「Precious Night」は、ディレクターが涙したというエピソードを持つ、物語を彩る重要な楽曲です。

反響と展開

『しろくまベルスターズ♪』は発売後、PCpressやGetchu.com、各ゲーム雑誌の売上ランキングで上位にランクインし、ブランドへの期待通りの好調なセールスを記録しました。Getchu.comのユーザー人気投票でも2位を獲得するなど、プレイヤーからの高い支持を得ました。批評家からは「PULLTOPなりのクリスマスを描いたユニークな世界観と心温まるストーリー」が評価されており、癒やしを求めるプレイヤーに勧められています。

本作はWindows版の発売後も展開が続き、2012年7月26日には、新規ストーリーやイベントCGを追加したPlayStation Portable版『しろくまベルスターズ♪ ハッピーホリデーズ！』が発売されました。他にも、コミック、ライトノベル、ビジュアルファンブック、キャラクターソングCDといった関連アイテムが多数リリースされており、作品の世界観やキャラクターは様々な形で楽しまれています。

『しろくまベルスターズ♪』は、クリスマスの温かい雰囲気を基調とし、ファンタジーながらも親しみやすいキャラクターたちの交流を通じて、プレイヤーに「幸せ」を感じさせる作品として、多くのファンに愛されています。

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