すてきな三角関係 壁際族に花束を

『すてきな三角関係 壁際族に花束を』：閉鎖的な職場と青春の光

1987年、TBS系列で放送されたテレビドラマ『すてきな三角関係 壁際族に花束を』は、赤川次郎の人気小説『壁際族に花束を』を原作とする青春コメディです。全6話という短いながらも印象的な物語は、閉鎖的な職場環境の中で働く人々の日常と、そこに生まれる不思議な三角関係をユーモラスに描いています。

舞台となるのは、コンピュータソフト開発会社にある総務三課。窓がなく、倉庫の一角にあるその部屋は、社内では「壁際課」と呼ばれ、仕事ができない社員や、何かと厄介な社員たちが集められる部署でした。まさに「壁際族」の集まる場所です。

主人公は、そんな壁際課に配属されたばかりの新入社員、君原めぐみ。彼女は、課長である大友兼司とその娘・奈美という、予想外の三角関係の中心に巻き込まれていきます。

大友兼司は、部下からの信頼も厚く、人望のある課長。しかし、彼は出世への野心を捨てきれていない、どこか頼りない一面も持ち合わせています。一方、彼の娘である奈美は、明るく活発な女子高校生。父親の将来を案じ、彼が出世することを心から願っています。

めぐみは、仕事を通して兼司と関わる中で、彼への好意以上の感情を抱き始めます。しかし、そこに奈美の存在があるため、めぐみの気持ちは複雑さを増していきます。この、新入社員と課長、そして課長の娘という、年齢も立場も異なる3人の間の微妙な感情の揺れ動きが、ドラマの大きな魅力となっています。

壁際課の個性豊かなメンバーも物語を彩ります。恋人を亡くし、その思い出に浸る関義隆、お調子者で宴会好きの根岸透、そして小谷達朗との恋仲にある市川明美など、それぞれの事情を抱えたキャラクターたちが織りなす人間模様は、笑いと共感を呼びます。

ドラマは、これらの登場人物たちの日常をユーモラスに描きながらも、それぞれの葛藤や成長、そして人間関係の温かさも丁寧に表現しています。閉鎖的な環境の中で働く人々の姿をリアルに描きつつ、そこに青春のきらめきと希望を灯す、そんな作品と言えるでしょう。

ただし、このドラマはいくつかの地域では放送されませんでした。石川県では、同時間帯に他局の番組が放送されていたため、再放送を含めて一度も視聴することができませんでした。また、西村知美の出身地である山口県でも、別の番組の同時ネット放送により、視聴できなかった地域があります。

キャストには、石川秀美、西村知美、津川雅彦といった当時の人気俳優陣が出演。主題歌は、石川秀美の『素敵な勇気』が使用されました。これらの要素も相まって、当時多くの視聴者を魅了した作品と言えるでしょう。

『すてきな三角関係 壁際族に花束を』は、職場における人間関係や、青春の葛藤、そして家族の温かさなど、普遍的なテーマを軽妙なタッチで描いた、忘れがたいドラマです。限られた地域での放送という点も相まって、今となっては希少価値の高い作品と言えるかもしれません。

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