すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢

絵画『すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢』

『すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢』（仏：Mademoiselle Georgette Charpentier assise）は、フランスの著名な画家ピエール＝オーギュスト・ルノワールによって1876年に制作された作品で、現在は東京のアーティゾン美術館に収蔵されています。この絵画は、ルノワールのパトロンであり、著名な出版業者であるジョルジュ・シャルパンティエの一人娘であるジョルジェットをモデルにしています。彼女は1872年に生まれ、この作品が描かれたときにはまだ4歳でした。

また、ジョルジェットは1878年に描かれた『シャルパンティエ夫人とその子どもたち』にも姿を見せており、彼女はその絵の左側に座っています。ジョルジュ・シャルパンティエは、当時の著名作家たちの作品を手掛け、大変な成功を収めた出版社の経営者でした。彼はルノワールの作品を頻繁に購入し、1875年のオークションでいくつかのルノワールの作品を落札しています。翌年には、娘の肖像画をルノワールに依頼し、この作品が誕生しました。

本作は、1877年に開催された第3回印象派展に出品され、ルノワールの独自の表現技法である「筆触分割」が用いられています。この技法では、絵の具を混ぜることなく、色をそのままキャンバスに載せることで、視覚的な印象を豊かにしています。

作品の描写とスタイル

作品の中で、ジョルジェットは青色のドレスをまとい、豪華な椅子に小さく座っています。彼女の微笑みは温かみを持ち、ソックスもドレスと同じ青色で統一されています。青色は彼女の髪や目の周りにもあしらわれており、画面全体に一体感を生み出しています。また、床にはカーペットが敷かれており、このカーペットにも青色が用いられています。ジョルジェットの肌には、青色に加えて、黄色や赤色なども巧みに使われています。赤色のサンゴのネックレスが彼女の首元を飾り、少女らしさを一層引き立てています。脚は椅子につかない位置にあり、少し大人びたポーズをとっていることが印象的です。このポーズは、後のルノワールの作品にも類似した表現が見られます。

評価と解釈

この絵画について、ブリヂストン美術館のキュレーターである貝塚健は「この絵には、社長に何とか気に入られようとする切羽詰まった感じがある」と評価し、次世代を育てる親の期待を反映していると指摘しています。また、同館の宮崎克己は、ルノワールが描く子どもを見下ろす構図が、特定の時間や瞬間を捉えたものとして、独特の雰囲気を醸し出していると述べています。

この作品は、ジョルジェットの生涯にわたって常に彼女と共にありましたが、彼女が1945年に亡くなった後、彼女の遺族によって手放され、最終的には1987年にブリヂストン美術館（現・アーティゾン美術館）のコレクションに加わりました。このように、ルノワールの『すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢』は、彼の作品の中でも重要な位置を占め、印象派の技法と表現力を体現したものと言えるでしょう。

もう一度検索