せんだご汁

熊本県天草地方の郷土料理：せんだご汁

天草地方に伝わる郷土料理「せんだご汁」は、独特の製法で作った団子が入った、滋味深い汁物です。一般的なだんご汁とは異なり、サツマイモから作られた団子を使用している点が大きな特徴です。

「せんだご」の「せんだ」は、サツマイモのでんぷんから団子を作る工程に由来します。「洗う」という意味を持つ「洗（せん）」の通り、サツマイモをすりおろし、水の中ででんぷんを沈殿させることで、でんぷんと繊維分を分離します。このでんぷんと繊維分を混ぜ合わせて作られた団子が「せんだご」です。

この「せんだご」は、汁物としていただくだけでなく、茹でた後にきな粉をまぶして、おやつとしても楽しまれています。モチモチとした食感と、サツマイモの優しい甘さが特徴です。

天草地方では、山が海岸に迫り、平地が少なく、棚田が多く見られる地形のため、米の生産量が限られていました。そのため、サツマイモ（天草では「からいも」と呼ばれています）が重要な食料源となり、様々な料理に用いられてきました。せんだご汁も、そうした天草の風土と人々の生活の中で育まれた郷土料理と言えるでしょう。

せんだご汁に使われる団子は、サツマイモでんぷんが一般的ですが、地域によってはジャガイモを用いる場合もあります。材料や作り方のバリエーションも、この料理の豊かさを象徴しています。

せんだご汁の起源については諸説ありますが、17世紀頃、宣教師が天草にやってきて、孤児たちにこの料理を与えたのが始まりという説も伝えられています。この説が事実であれば、せんだご汁は、天草の人々の生活を支え、人々の温かい心を繋いできた歴史を持つ料理と言えるでしょう。

現在では、天草地方の家庭料理として親しまれているだけでなく、地域のイベントや観光客向けの料理としても提供され、多くの人に愛されています。独特の製法と、サツマイモの風味、そして天草の豊かな自然と歴史が織りなす、せんだご汁は、まさに天草の宝と言えるでしょう。

せんだご汁を味わえば、天草の豊かな自然と、人々の温かさ、そして長い歴史を感じることができるはずです。ぜひ、天草を訪れた際には、この郷土料理を味わってみてください。

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