その名はバレット

『その名はバレット』（原題：Barrett）は、シド・バレットが1970年に発表した2作目のソロ・アルバムです。彼の音楽的な探求心と創造性が際立つ作品として、今日でも多くのファンに愛されています。

制作の背景

1970年2月24日、シド・バレットはBBCの番組『The John Peel Show』に出演し、本作に収録されている「ジゴロおばさん」「ベイビー・レモネード」「興奮した象」を含む5曲を録音しました。この貴重な音源は、1987年に『The Peel Sessions』としてCD化されています。

本格的なレコーディングは2月26日に開始され、プロデュースはピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアが中心となって担当しました。前作『帽子が笑う…不気味に』にも参加したロジャー・ウォーターズは、「もう誰もシドをプロデュースできない」と語り、本作には関与していません。

レコーディング期間中の6月6日には、シドはデヴィッド・ギルモアとジェリー・シャーリーと共に、ピンク・フロイド脱退後初の公の場でのライブを行いましたが、わずか4曲でステージを降りました。

ジャケットと評価

ジャケット・デザインは、数々の名盤を手掛けてきたヒプノシスが担当しました。イギリス盤の初回盤は、エンボス仕様のジャケットが特徴です。

本作は残念ながら全英チャートにはランクインしませんでしたが、シド・バレットにとって最後のオリジナル・アルバムとなりました。1974年には、前作『帽子が笑う…不気味に』と本作をセットにした2枚組LP『何人をも近づけぬ男』が発売されました。その後は、未発表音源集や既存の音源をまとめたコンピレーション・アルバムがリリースされています。

収録曲

全曲、シド・バレットによる作詞・作曲です。

1. ベイビー・レモネード - "Baby Lemonade" - 4:06
2. ラヴ・ソング - "Love Song" - 2:59
3. ドミノ - "Dominoes" - 4:03
4. あたりまえ - "It Is Obvious" - 2:54
5. ラット - "Rats" - 2:54
6. メイシー - "Maisie" - 2:46
7. ジゴロおばさん - "Gigolo Aunt" - 5:42
8. 腕をゆらゆら - "Waving My Arms in the Air" - 2:07
9. 嘘はいわなかった - "I Never Lied to You" - 1:47
10. 夢のお食事 - "Wined and Dined" - 2:53
11. ウルフパック - "Wolfpack" - 3:41
12. 興奮した象 - "Effervescing Elephant" - 1:50

1993年のリマスターCDには、以下の7曲がボーナス・トラックとして収録されています。

1. ベイビー・レモネード (テイク1) - "Baby Lemonade" (Take 1) - 3:46
2. 腕をゆらゆら (テイク1) - "Waving My Arms in the Air" (Take 1) - 2:13
3. 嘘はいわなかった (テイク1) - "I Never Lied to You" (Take 1) - 1:48
4. ラヴ・ソング (テイク1) - "Love Song" (Take 1) - 2:32
5. ドミノ (テイク1) - "Dominoes" (Take 1) - 0:40
6. ドミノ (テイク2) - "Dominoes" (Take 2) - 2:36
7. あたりまえ (テイク2) - "It Is Obvious" (Take 2) - 3:51

参加ミュージシャン

シド・バレット - ボーカル、ギター
デヴィッド・ギルモア - 12弦[[ギター]]、ベース、オルガン、ドラムス
リチャード・ライト - キーボード、ピアノ
ジェリー・シャーリー - ドラムス、パーカッション
ウィリー・ウィルソン - ドラムス、パーカッション
ヴィク・セイウェル - チューバ (on 12.)

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